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がん患者さんは、がんそのものや治療、長期にわたる療養生活などによって血栓症を発症しやすいことがわかっています。血栓症は、命に関わる場合もあるので注意が必要です。がん関連血栓症の原因や症状、治療法についてわかりやすくまとめます。
血栓症とは、血管の中にできた血液のかたまりが血管を詰まらせてしまう病気のことです。血管が詰まってしまうと、臓器がうまく働かなくなり、命に関わる場合もあるので注意が必要です。
がん患者さんは、がんではない方に比べて、血栓症になりやすいことがわかっています。具体的には、がんの種類や進行度によって違いはあるものの、がん患者さんにおける血栓症の発症率はがんではない方の4 ~7倍といわれています。
がんと診断された患者さんや、がんの治療中の患者さんが血栓症を発症した場合には、がん関連血栓症と考えます。がん関連血栓症には、静脈血栓塞栓症や動脈血栓塞栓症、非細菌性血栓性心内膜炎などが含まれますが、静脈血栓塞栓症の占める割合が最も大きいです。静脈血栓塞栓症の代表的なものとして深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症があり、動脈血栓塞栓症には脳梗塞や心筋梗塞、腎梗塞などが含まれます。
静脈血栓塞栓症とは、主に肺や太もも、ふくらはぎの血管に血液のかたまりが詰まる病気のことです。静脈血栓塞栓症は、深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症に分けられます。太ももやふくらはぎなどの足の血管に血のかたまりができて詰まることを深部静脈血栓症といいます。足の血管でできた血のかたまりが、血液の流れに乗って肺の血管を詰まらせる病気を肺血栓塞栓症とよびます。静脈血栓塞栓症は、がん患者さんだけでなく、妊娠、高齢、寝たきり、肥満などの要因があると発症しやすくなることがわかっています。
がん患者さんが血栓症になる理由は、がんそのものによるものか、がんの治療によるものの大きく2つに分けられます。
がん細胞は、血液を固まりやすくする物質を分泌しているので血栓が生じやすいといわれています。また、進行して大きくなったがんに血管が圧迫されると、血液の流れが悪くなるので血栓ができやすくなります。
がんの治療で血管が傷つけられると、血流の悪化や、血液が固まりやすい状態になります。例えば、抗がん剤を使用すると、がん細胞だけでなく、正常な細胞にもダメージが出ることが多く、血管が傷ついてしまう場合があります。また、がんに対する手術や放射線治療、点滴治療などによって血管が傷つき、血液の流れが悪くなることがあります。
また、がんの療養のために長期間にわたり安静にすることや、抗がん剤の副作用で十分な水分がとれずに脱水を起こすことによって血栓症の発症リスクが高まります。
血栓塞栓症の症状には、足の痛みや腫れ、呼吸困難、冷や汗、動悸、胸痛などがあります。症状が前もって現れる場合と突然現れる場合があります。呼吸困難や胸の痛み、冷や汗などの症状が見られる場合や症状が悪化している場合には注意が必要です。もし自宅で症状が出た場合には、すぐに医療機関を受診しましょう。肺血栓塞栓症は急激に悪化することがあり、命の危険もあるため、なるべく早く治療を受ける必要があります。
●スクリーニング検査
スクリーニング検査では、全身状態を把握するために、血圧測定や心電図、胸部レントゲン撮影、心電図、血液生化学検査などを行います。スクリーニング検査で血栓塞栓症が疑われる場合には、精密検査を行います。
●止血検査(Dダイマー測定)
血液中のDダイマーという物質を測定すると、血栓症を合併しているかどうかわかります。Dダイマーの異常を認めた場合には、画像検査を行います。
●画像検査(下肢静脈超音波検査)
下肢静脈超音波検査では、足の血管の中に血栓があるかどうか超音波を使って調べます。血栓の有無だけでなく、血栓の大きさや血液の流れなども調べることができます。
●画像検査(造影CT検査)
造影CT検査では、造影剤を血管内に注入するので、血管の様子がよくわかります。血栓の有無や大きさ、場所などを調べることができます。
●抗凝固療法
抗凝固療法は、抗凝固薬を使用して血栓症を改善する治療法です。抗凝固薬には、血液をさらさらにして血栓を小さくする作用があります。抗凝固薬には注射液と内服薬があり、患者さんの状態や治療期間を考慮して、担当医が選びます。
●血栓溶解療法
血栓溶解療法は、身体の中にカテーテルとよばれる管状のものを留置し、血栓を薬で溶かす治療法です。合併症として、出血を起こすことがあるので治療経験の多い専門施設で行われます。
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