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がん悪液質とは?

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がん患者さんの中には、特に食事制限をしているわけではないのに、体重が減ったり、食欲が落ちたり、筋肉量が減ってしまうといった症状があらわれることがあります。

このような状態を「がん悪液質」といいます。がん悪液質が進行すると、がんの治療の妨げになることがあるため、できるだけ早く気づいて対処することが大切です。

目次

がんの合併症のひとつ
「がん悪液質」とは

がん患者さんの中には、食事量が減っているわけではないのに、体重や筋肉が落ち、食欲不振や代謝異常、身体機能の低下などの症状が現れることがあります。このような状態を「がん悪液質」といいます。

進行がんの患者さんのうち、約5~8割にこの悪液質がみられるといわれており、非常に多くの方に関係する合併症のひとつです。なお、「悪液質」は心不全・腎不全・慢性閉塞性肺疾患(COPD)などでも見られますが、がんが原因で起こるものは「がん悪液質」として区別されています。

「がん悪液質」というと、進行がんや末期がんの患者さんに特有のものと思われがちですが、がんと診断された時点ですでに悪液質の状態にある方も少なくありません。

悪液質が進行すると、筋力の低下によって日常生活に支障が出たり、予後(生存期間)に影響が及ぶこともあります。だからこそ、早い段階で気づいて適切に対応することが重要です。

がん悪液質の原因・メカニズム

がん悪液質の原因はまだ完全には解明されていませんが、その一因と考えられているのが、がん細胞が分泌する「サイトカイン」と呼ばれる物質です。サイトカインは本来、体内で免疫反応を調整し、外敵から身を守るための重要な情報伝達物質です。しかし、がんになるとこのサイトカインが過剰に産生され、全身にさまざまな悪影響を及ぼすことが分かっています。

中でも、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、TNF-α(腫瘍壊死因子α)といった「炎症性サイトカイン」が増えると、体内で慢性的な炎症が起こり、タンパク質や脂肪の分解が進んでしまいます。

筋肉は主にタンパク質で構成されているため、炎症性サイトカインの影響で筋肉が分解され、結果として体が痩せてしまうのです。

がん悪液質のステージ分類

2011年、European Palliative Care Research Collaborative(EPCRC/欧州緩和ケア共同研究)によって、がん悪液質の診断基準とステージ分類が提案されました。この基準では、がん悪液質を進行の度合いによって「前悪液質」「悪液質」「不応性悪液質」の3段階に分類しています。

「前悪液質」は悪液質の初期段階にあたりますが、患者さんご本人や医療者でも気づきにくいことが多く、早期発見が難しいのが特徴です。そのため、日々の食事量や体重の変化に注意を払い、早い段階で兆候をとらえることが大切です。

悪液質が進行すると、食欲不振・体重減少・倦怠感・筋肉量の低下といった症状が顕著になります。

さらに「不応性悪液質」まで進行すると、筋力の低下が著しくなり、日常生活に大きな支障が出るほか、生活の質(QOL)の低下や、抗がん剤の副作用が強く出やすくなることもわかっています。有効な治療法が限られており、治療方針の見直しや緩和ケアの検討が必要になります。

▼EPCRCによるがん悪液質のステージ分類(2011年)

前悪液質 ● 過去6か月間の体重減少が5%以下
● 食欲不振や代謝異常がみられる
悪液質 ● 以下のいずれかに当てはまる場合、がん悪液質と診断される
①過去6か月間の体重減少が5%を超える
②体格指数(BMI)が20未満で体重減少が2%を超える
③サルコペニア(筋肉減少)があり、体重減少が2%を超える

● 食事量が減っている、あるいは全身性の炎症を伴う
不応性悪液質 ● 悪液質の症状に加えて、タンパク質・脂質・糖質などの分解が進行し、抗がん剤による治療が困難な状態
● 全身状態を示すパフォーマンス・ステータス(PS)が下がっている
● 予測される生存期間が3か月未満

出典:NPO法人キャンサーネットジャパン『もっと知ってほしい がん悪液質の予防と改善のこと ~がん治療中の食欲低下、体重減少~』を参考に作成

がん悪液質の症状

がん悪液質にはさまざまな症状がありますが、とくに多いのが「体重の減少」「筋力の低下(サルコペニア)」「食欲不振」、そして「見た目の変化」です。ここでは、がん悪液質の代表的な症状について紹介します。

体重の減少

がん患者さんにとって、体重の減少はよく見られる症状のひとつです。その原因は大きく2つに分けられます。

ひとつは、がんやその治療の影響によるものです。たとえば、食道や腸の手術による摂食障害、手術後の腸閉塞、抗がん剤治療による吐き気・嘔吐・便秘・痛み・倦怠感・不安などが原因で、食事の摂取量や栄養状態が低下し、体重が減ってしまうことがあります。

もうひとつは、がん悪液質による体重減少です。この場合は、しっかり食べていても体重が減っていきます。これは、がん細胞が分泌する「炎症性サイトカイン」という物質が、体内のタンパク質や脂肪を分解し、代謝を異常にしてしまうためです。

つまり、「以前と同じ量を食べているのに、どんどん痩せていく」という場合は、がん悪液質が疑われます。

体重が大きく減ると、歩くのがつらくなったり、疲れやすくなったりして、日常生活やがん治療に大きな影響を与えることがあります。そのため、できるだけ早く気づき、体重の維持に努めることが大切です。

筋力の低下・サルコペニア

がん悪液質では、がん細胞から分泌される炎症性サイトカインの影響で、筋肉が分解されやすくなります。その結果、筋力が低下し、「サルコペニア(筋肉量減少症)」と呼ばれる状態になることがあります。サルコペニアはがん悪液質に限らず、加齢や慢性腎臓病などでも見られる症状ですが、がん患者さんの場合は悪液質によって進行しやすいとされています。

筋力が落ちると、日常生活の中で体を動かすことが難しくなります。たとえば、台所に立つ、買い物に行く、荷物を持つといった日常の動作が大変に感じられるようになります。

また、筋力低下は倦怠感の原因にもなります。動くのがつらくなることで外出や活動が減り、家で過ごす時間が増えると、さらに筋力が落ちてしまう…そんな悪循環に陥りやすくなります。加えて、筋力の低下は免疫力の低下や内臓機能への悪影響にもつながる可能性があるため、早期に気づいて対処することが大切です。

食欲不振

食欲不振は、がん悪液質でよく見られる代表的な症状のひとつです。がん患者さんの中には、「食べたいのに食べられない」「食べ物を見るのもつらい」「少ししか食べられず、家族を心配させてしまう。一緒に食事をするのが気が重い」といった、食に関する悩みを抱えている方も少なくありません。

がん悪液質による食欲不振の原因のひとつに、「レプチン」というホルモンの働きがあります。レプチンは脂肪細胞から分泌され、食欲を抑える役割をもっていますが、がんの影響でこのホルモンの分泌が増えると、食欲がわきにくくなります。また、通常は胃から分泌される「グレリン」という食欲を高めるホルモンの分泌量が減ることも、食欲低下の一因とされています。

さらに、がん悪液質では「炎症性サイトカイン」が体内で多く分泌され、慢性的な炎症状態になります。これらのサイトカインにも食欲を抑える作用があり、複数の要因が重なって食欲が低下すると考えられています。

加えて、がんそのものによる痛みや不安、抗がん剤の副作用(吐き気・口内炎など)も食欲に影響を及ぼします。そのため、食欲不振の原因をひとつに絞らず、多角的にとらえて対策を考えることが大切です。

見た目の変化

がん悪液質では、体重や筋肉量が減少することで、外見に変化があらわれることがあります。

たとえば、頬の脂肪が減ってこけたように見えたり、目のまわりがくぼんで見えたりすることで、「やつれて見える」「以前の自分と違う」と感じる方もいます。その結果、「痩せた姿を見られたくない」「人と会いたくない」と感じ、外出や家族・友人との交流を避けてしまうこともあります。

最近では、見た目の変化に対応するリハビリテーションやカウンセリング、心理的なサポートを取り入れる医療機関も増えてきました。

見た目の変化は、本人にとって非常に大きなストレスになることがあります。だからこそ、身体的なケアに加えて「心のケア」も大切にしながら、無理のないかたちで支援を受けていくことが望まれます。

がん悪液質と余命の関係

がん悪液質は、生存率に深く関わっていることがわかっています。

悪液質が進行すると、体内の脂肪やタンパク質が分解されて筋肉量や体重が減少し、身体機能が低下していきます。その結果、日常生活に支障が出たり、抗がん剤の副作用が強く出やすくなったりすることで、がんそのものへの治療が難しくなる場合もあります。

がん悪液質は、「前悪液質」「悪液質」「不応性悪液質」の3段階に分類されます。このうち最も進行した状態である「不応性悪液質」では、有効な治療手段が限られ、生存期間の目安はおよそ3か月未満とされています。

また、体重の減少が大きいほど、生存期間が短くなる傾向があることも報告されています。だからこそ、がん悪液質が進行する前に、できるだけ早く気づき、適切に対応することがとても重要です。

がん悪液質の治療

がんによる痛みや、抗がん剤の副作用による吐き気などは比較的気づきやすい症状ですが、体重の減少は軽度であれば日常生活に支障が出にくく、「少し痩せただけ」と感じてしまう患者さんも少なくありません。

しかし、がん悪液質が進行すると、治療の効果が得られにくくなることがあります。そのため、早い段階で気づき、適切に対応していくことが大切です。

がん悪液質の治療では、薬物療法に加えて、栄養療法や運動療法などを組み合わせた多面的なアプローチが重要とされています。こうした対策を総合的に行うことで、症状の進行を抑え、生活の質(QOL)を保つことが期待されます。

薬物療法

日本では、世界に先駆けて2021年1月に「アナモレリン(商品名:エドルミズ)」が、がん悪液質の治療薬として承認されました。

アナモレリンは「グレリン様作用薬」と呼ばれるタイプの薬です。グレリンは、空腹時に主に胃から分泌されるホルモンで、脳に働きかけて食欲を高めるほか、成長ホルモンの分泌を促して筋肉の形成を助ける働きがあります。

アナモレリンはこのグレリンと似た作用をもっており、服用することで食欲を高め、筋肉量の維持・増加や体重の回復といった効果が期待されています。

ただし、がん悪液質の治療では、薬だけで十分な効果を得ることは難しいとされており、薬物療法とあわせて栄養管理や運動療法など、多角的な視点からのサポートが重要になります。

栄養療法

がんと診断されたら、できるだけ早い段階から適切な栄養補給を意識することが大切です。

がん悪液質の状態では、安静にしていてもエネルギーが消費されてしまうため、高カロリーの食事を摂るだけでは回復が難しい場合があります。そのため、栄養管理士などの専門家に相談しながら、エネルギーを十分に摂取しつつ、不足しやすい栄養素をバランスよく補うことが重要です。

少量ずつ摂取する

理想は栄養バランスのとれた食事ですが、無理にこだわる必要はありません。食欲がないときには、まずは「食べたいものを少量ずつ摂る」ことを意識してみましょう。

「食べられない」「食べたくない」ときには、アイスクリームやゼリー、プリン、チョコレートなどでカロリーを補うだけでも十分。また、市販の栄養補助食品を活用するのも効果的です。

口内炎に対応する

口内炎は、がん治療中によく見られる副作用のひとつで、食欲低下の原因にもなります。手術や抗がん剤治療を始める前に、歯科などで口腔ケアを受けておくと予防につながります。

治療中は、適度なうがいや丁寧な歯磨きを心がけ、口の中を清潔に保ちましょう。また、食事は熱すぎるもの・硬いもの・酸味や辛みの強いものは避けると安心です。

なお、殺菌作用のあるうがい薬は刺激が強く、かえって口内炎を悪化させてしまうこともあるため、使用には注意が必要です。

味覚や嗅覚の変化に対策をする

がん悪液質の状態では、味覚や嗅覚の変化によって食欲が落ちることがあります。そんなときは、酢の物・カレー風味・しょうが焼きなど、香りや味にアクセントのある料理を試してみるのもひとつの方法です。

だし・酢・ゆず・ごまなどの風味を活かすと、塩分を控えながらも満足感を得やすくなります。甘みを強く感じるときには、砂糖やみりんを減らして調整しましょう。また、料理のにおいが気になるときには、少し冷ましてから食べると香りがやわらぎます。

「おいしくない」と感じるものは、無理に食べなくても構いません。

無理に食べなくてもよいと考える

がん悪液質では、食欲低下や味覚の変化に加えて、がんやその治療による吐き気・嘔吐・倦怠感などが重なることもあり、思うように食べられない時期があります。そうしたときは、「無理して食べなければ」と気負う必要はありません。「食べられるときに、食べられるものを、少しずつ」で大丈夫です。

ご家族やまわりの方も、無理に食事を勧めないようにすることが、患者さんの精神的な負担を軽減することにつながります。

運動療法

がんに対する手術や放射線療法の前後、あるいは治療中に身体を適度に動かすことで、合併症や後遺症、副作用の軽減につながることがわかっています。がん悪液質の場合も同様に、適度な運動が活動量の維持や倦怠感の軽減、筋肉量の維持に役立つとされています。

がん悪液質に対する運動療法では、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることが基本です。ただし、体調や治療内容によって適切な運動量は異なるため、始める前に必ず医師に相談しましょう。

有酸素運動には、ウォーキング・サイクリング・ジョギング・水泳などがあります。中でもウォーキングは気軽に始めやすく、おすすめです。まずは1日4,000歩以上を目標に、可能であれば6,000~8,000歩を目安に歩いてみましょう。

筋力トレーニングは、筋肉量の維持に効果的です。まずは「座ったまま膝の曲げ伸ばしをする」「立った状態でかかとを上げる」「座って膝からももを持ち上げる」といった軽い運動から始めてみましょう。これらを1セット10回、1日3セットを目安に、無理のない範囲で続けることが大切です。

まとめ

「しっかり食べているのに体重が減ってきた」
このような症状がある場合、がん悪液質の可能性があります。

かつては、がん悪液質は治療が難しいとされていましたが、現在では薬物療法・栄養療法・運動療法を組み合わせることで改善が期待できるようになってきました。

もし、食欲の低下や体重の減少などの変化に気づいたら、早めに医師や看護師、薬剤師に相談しましょう。早期に対応することで、がん治療の効果を高め、生活の質(QOL)を保ちやすくなります。

如月 真紀

<この記事を書いたのは・・・>

如月 真紀(きさらぎ まき)

医師、医学博士、総合内科専門医。都内の大学病院勤務を経て、現在はアメリカで研究中。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、医療系コンテンツ制作など幅広く手がけている。研究の傍ら、医学の知識や医師の経験を活かし、患者や患者家族のためになるコンテンツ作成を目指している。

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