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アブラキサンは、乳がんや胃がん、肺がん、治療切除不能な膵がんなどに対する治療薬として使われます。ここでは、アブラキサンの作用や特徴、効果、副作用、注意点などについて説明します。ただし、他の治療薬と同じように、アブラキサンの効果や副作用は個人によって異なることも理解しておいてください。
「アブラキサン」は、非小細胞肺がん、乳がん、胃がん、治癒切除不能な膵がんの治療に用いられる薬です。「パクリタキセル」と呼ばれる抗がん剤に、ヒト血清アルブミンを結合させることによって、ナノ粒子化させた製剤です。アブラキサンは、過剰症が起きる可能性の高い溶剤を使用していないことから、従来パクリタキセルを使用する場合のような過剰症予防のためのステロイドなどの前投与が不要となっています。また、このことにより、点滴時間も30分に大幅に短縮されています。
パクリタキセルは、植物由来で「タキサン」と呼ばれるグループに分類されている抗がん剤のひとつです。このパクリタキセルは、がん細胞の細胞分裂に関係している微小管の働きを阻害することによって、がん細胞の分裂を阻害するはたらきを持っています。この作用により、がん細胞の増殖を抑制します。
「アルブミン」は、血液中にある主要なたんぱく質のひとつです。上記でご紹介しているパクリタキセルは、水に溶けにくい性質を持っています。そのため、パクリタキセルを溶けやすくするためにアルブミンを添加しています。また、これまでのパクリタキセル注射薬のように、パクリタキセルを溶かすためにポリオキシエチレンヒマシ油やアルコールなどを加えていません。そのため、治療を行う前にステロイドなどアレルギーを防止するための薬を投与する必要がないことに加えて、アルコールに過敏な方への投与も可能となっています。
また、アルブミンは人の血液を原料として作られているため、製造過程においてウイルスなどの感染防止対策を行っています。
アブラキサンは、乳がんや胃がん、肺がん、治療切除不能な膵がんなどに対して使用される薬です。アブラキサンは、従来のパクリタキセルによる過敏症が起こらないように改善されたナノ粒子製剤です。アブラキサンは、従来のパクリタキセルが改良されているので、過敏症予防のためのステロイドや抗ヒスタミン薬の前投与が不要となり、アルコール過敏症の患者さんにも投与できるようになりました。アブラキサンは、がん細胞の増殖に必要な微小管(びしょうかん)に作用し、がん細胞を死滅させます。
アブラキサンは、乳がんや胃がん、非小細胞肺がん、治療切除不能な膵がんに対して効果を期待できます。
アブラキサンの有効成分であるパクリタキセルは、がん細胞の増殖に必要な微小管(びしょうかん)に作用し、がん細胞を死滅させます。
アブラキサンの用法・用量は、がんの種類や併用する薬剤の種類などによって異なります。
例えば、成人の乳がんに対しては、1日1回260㎎/m2を30分かけて点滴静注し、少なくとも20日間は休薬し、経過を見ながら投与を繰り返します。成人の胃がんに対しては、1日1回100㎎/m2を30分かけて点滴静注し、少なくとも6日間は休薬します。その後は、3週間連続で週1回投与し、4週目は休薬し、経過を見ながら投与を繰り返します。
患者さんの状態を考慮し、投与量は適宜調整されます。
アブラキサンの投与スケジュールは、どのがんの治療を行うかによって異なります。例えば乳がんや胃がんの治療の場合には3週間(21日)を1コースとして行う場合があります。この場合には、1日目に点滴を行い、その後少なくとも20日間は休薬する、という流れを繰り返して治療を進めます。
ただし、アブラキサンの投与スケジュールについては、患者さんの体の状態や副作用などに合わせた投薬が行われますので、詳しいスケジュールについては担当の医師にご確認ください。
投与は静脈から点滴が行われますが、点滴時間は30分となっています。投与量は患者さんの身長・体重から体表面積を計算して決められます。
投与している薬が血管(静脈)の外に漏れてしまわないように、点滴を行っている最中はできる限り腕を動かさずに安静にしていることが大切です。もし薬が漏れてしまった場合には、注射部位がかたくなる場合や、腫れて痛みを感じるケースがあります。
点滴中に点滴している部位が痛い、熱感がある、違和感がある、周辺部位が赤くなったり腫れたりしている場合には、すぐに担当の医師や薬剤師、看護師に伝えましょう。
また、薬と体の相性が悪い場合にはアレルギーを起こす可能性があります。そのため、吐き気を感じる、気分が悪くなる、冷や汗が出る、寒気を感じる、息苦しさを感じる、心臓がドキドキする、体にかゆみを感じる、皮膚が赤くなる、ぶつぶつができているなどの症状が見られる場合にも、すぐに担当医師や薬剤師、看護師に知らせる必要があります。
アブラキサンの治療中に注意すべき点がいくつかあります。
患者さんの体の状態によっては、アブラキサンを用いた治療を受けられない方場合もあります。また、中にはアブラキサンによる治療を行う際には注意しながら進める必要があるといったケースもあります。特に下記に当てはまる方はアブラキサンを用いた治療を受けられないので、心当たりがあれば前もって医師への相談を行ってください。
また、骨髄抑制のある方や肝臓に障害がある方、腎臓に障害がある方、間質性肺疾患にかかっている方は、治療を行う上で注意が必要となります。加えて、他の薬を使用している場合や新たに使用する場合には、医師や薬剤師への相談が必要です。
この薬による治療を受ける場合には、薬の効果や注意するべき点について十分に理解できるまで説明を受けることが大切です。
アブラキサンに対して、過敏反応が出る場合があります。過敏反応は、軽度のものから重度のものまで起こる可能性があります。重度の過敏反応の症状である胸痛や低血圧、発汗、頻脈、呼吸困難などを認めた場合には、すぐにアブラキサンの投与を中止し、適切な処置をする必要があります。
アブラキサンの治療中に、高血圧や低血圧、徐脈などが起こる可能性があります。血圧や脈拍数をモニターするなど、患者さんの状態をよく確認しながら投与する必要があります。
アブラキサンの投与中に、関節痛や筋肉痛が起こることがあります。関節痛や筋肉痛は治療を開始してから2~3日後に出る場合がありますが、1週間以内に自然と良くなることが多いです。痛みがつらい場合には、鎮痛剤などで対応します。
手術の補助化学療法におけるアブラキサンの安全性や有効性は確立されていません。補助化学療法とは、がん細胞に対して薬を使用し死滅させることで、がんを小さくしたり、がんの再発を抑えたりする治療法です。
アブラキサンの治療中に、骨髄のはたらきが低下し、好中球や血小板の数が減ることがあります。好中球には身体を感染症から守るはたらきがあり、血小板には出血を止める役割があります。アブラキサンの投与前に好中球や血小板の数を確認し、必要に応じて休薬や減量を検討します。骨髄の機能が改善したら、再度投与することもできます。
アブラキサンの治療中に副作用が出ることがあるので、体調に変化があった時にはすぐに担当医に相談するようにしましょう。副作用によっては、投与を中止する必要があります。
アブラキサンの投与中に見られる可能性のある副作用には、以下のようなものが挙げられます。
今回挙げた症状以外でも、アブラキサンによる副作用の場合もあるので心配なことがあれば担当医に聞いてみるようにしてください。
アブラキサンの治療中に、重大な副作用が起こることがあります。適切に対処しないと命に関わる場合もあるので注意が必要です。アブラキサンの治療中に、体調に変化があった時にはすぐに担当医に相談するようにしてください。
アブラキサンで治療を行うと、骨髄のはたらきが抑えられることがあります。骨髄は、赤血球や白血球、血小板を作っているので、骨髄のはたらきが抑えられると、貧血や感染症、出血傾向などが起こる可能性があります。骨髄の機能が低下していると判断された場合には、骨髄の機能が回復するまで投与の延期が必要です。
アブラキサンの治療中に、間質炎肺炎を起こす可能性があるので発熱や咳などの症状や呼吸状態に注意する必要があります。定期的に胸部X線検査を行い、肺に異常が起こっていないかを確認します。間質性肺炎が起こった場合には、アブラキサンの投与は中止する必要があります。
アブラキサンの治療中に、手足のしびれや痛みなどの末梢神経障害が起こることがあります。手足の先の感覚がなくなったように感じる方もいます。保温やマッサージなどで改善する場合もありますが、症状が重い場合にはアブラキサンの投与の中止または減量を検討します。