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乳がんと診断されても、乳房の切除に抵抗を感じる方は多いです。手術をするかしないかは、最終的には患者さん本人の意思で決められますが、乳房を切除しない治療法のメリットやデメリットをよく理解しておくことが重要です。
乳がんに対して手術をすると、多くの場合には乳がんと共に乳房も切除することになります。乳房は、女性にとって身体の象徴ともいえる部分なので、手術によって失うことに抵抗を感じ、手術をしたくないと悩む患者さんも多いです。
乳がんに対する標準治療は、手術、放射線療法、抗がん剤などによる薬物療法となっており、最も効果を期待できると考えられています。しかし、治療効果があったとしても、乳房を切除することによって精神的に負担が大きく、生活の質が下がると患者さんが考える場合には手術以外の方法を選択することもできます。
適応となる乳がんの条件はありますが、乳房を切除しない乳がんの治療法もあります。がんの大きさが小さく、悪性度が低い場合には、切らない乳がんの治療法を検討してもよいかもしれません。切らない乳がんの治療法には、ラジオ波熱焼灼療法(RFA)、非切除凍結療法、集束超音波治療があります。
ラジオ波熱焼灼療法とは、乳がんに針状の細い電極を刺し、ラジオ波とよばれる高周波の電流で乳がんを焼き切る治療法です。手術と比較すると治療後の痛みがほとんどなく、乳房の変形も最小限で済むというメリットがあります。しかし、ラジオ波で焼いた部分がしこりのように硬くなったり、ひきつれる場合があります。
また、手術中にがん細胞が残っているかどうかを確認できないので、がんを取り残している可能性があり、再発の不安もあります。ラジオ波熱焼灼療法の適応となる乳がんは、がんの大きさが1.5cm以下で、わきの下のリンパ節や他の臓器への転移がない、以前に乳がんの治療をしていない、などの条件が決められています。
非切除凍結療法とは、高圧のアルゴンガスとヘリウムガスでがん細胞内の水分を凍らせ、体温によって水分が溶けた時にがん細胞を破裂させる治療法です。破裂させた細胞は、時間が経つと吸収されて消えていきます。
がんの大きさにもよりますが、治療時間は40~50分程度で、局所麻酔で行うことができ、出血もほとんどありません。手術と比較すると、治療後の痛みや乳房の変形が少ないことがメリットです。また、日帰りや短期間の入院による治療が可能なので、患者さんの負担も小さくなります。
非切除凍結療法の適応となる乳がんは、1cm以下で悪性度の低いがんです。再発の危険性を見逃さないために、治療後には定期的に超音波やMRI検査を行います。
集束超音波治療とは、身体の外から超音波を当てて、がん細胞を焼く治療法です。麻酔の必要がなく、放射線の被ばくもないので身体への負担が少なく、日帰りでの治療が可能というメリットがあります。
ただし、集束超音波治療を行うための装置が高価なので、治療費が自費で高額になるというデメリットがあります。また、治療実績も少ないため、治療効果や再発リスクに関するデータが十分ではないことをよく理解しておくべきです。
乳房を失うというのは、女性にとって非常に大きな問題で手術をするかしないか迷われるのは当然のことです。女性にとって象徴ともいえる乳房を切除することに抵抗を感じて、手術をしたくない方も多いです。乳がんがまだ小さいのであれば乳房を切らない治療法を検討してもよいですし、場合によっては手術をしないという選択肢もあります。
ただ、乳がんが早く見つかった場合には、手術をすれば、乳房を失ったとしても命が助かり、長く生きられる可能性も高くなります。また、乳房再建術といって、失われた乳房をできる限り取り戻す手術もあります。
乳がんの手術をするかしないかは、最終的には患者さんの意思で決めることができます。個人の価値観、人生観があるので、何が正解かは一概に言えないでしょう。
大切なのは、全ての治療法や選択肢について、医師からよく説明を聞き、メリット、デメリットをよく理解することです。一人で抱え込まずに、「がん相談ホットライン」や「がん相談支援センター」などの相談窓口を利用するのも1つの方法です。
<この記事を書いたのは・・・>
如月 真紀(きさらぎ まき)
医師、医学博士、総合内科専門医。都内の大学病院勤務を経て、現在はアメリカで研究中。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、医療系コンテンツ制作など幅広く手がけている。研究の傍ら、医学の知識や医師の経験を活かし、患者や患者家族のためになるコンテンツ作成を目指している。
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