このサイトは「リンパ球バンク株式会社」をスポンサーとして、Zenken株式会社が運営しています。
シスプラチンは、胃がん、肺がん、膀胱がん、前立腺がんなど、多くのがんに対する治療薬として使われます。ここでは、シスプラチンの作用や特徴、効果、副作用、注意点などについて説明します。ただし、他の治療薬と同じように、シスプラチンの効果や副作用は個人によって異なることも理解しておいてください。
「シスプラチン」とは、がん細胞内のDNA鎖との結合により、DNAの合成やがん細胞の分裂を阻害する働きを持っている抗がん剤です。白金原子を持っていることから、抗がん剤の中では「白金製剤」に分類されている点が特徴のひとつといえます。
もともと細菌の増殖を抑える働きを持つ抗菌剤として発見されたものですが、その後に抗腫瘍効果が確認されたことによりがんの治療に用いられるようになりました。日本では1983年に承認されており、現在はさまざまながんの治療に広く使われています。
シスプラチンの特徴としては、高い腫瘍縮小効果を持つ反面、吐き気や腎臓への障害、骨髄機能の障害、神経への障害などさまざまな副作用が見られる場合があります。ただし、現在は副作用への対策についてもしっかりと行いながら治療ができるようになっています。
上記でご紹介した通り、シスプラチンは白金製剤のひとつです。白金製剤にはいくつか種類があり、それらの化合物の名前は「〜プラチン」となっている点が特徴です。シスプラチンのほか、「カルボプラチン」「ネダプラチン」「オキサリプラチン」と呼ばれるものがあります。
「カルボプラチン」は、シスプラチンの構造を変えることによって、吐き気や腎臓に対する障害、神経に対する障害の軽減が可能となっています。また、「ネダプラチン」は日本で開発が行われた抗がん剤であり、シスプラチンと比較すると腎臓への障害が少なくなっています。ただし、腎臓や血液への影響には注意しながら使用します。また、「オキサリプラチン」は、日本で合成されたのちに海外での研究が進んだ抗がん剤であり、2005年より大腸がんの治療に使用されています。
シスプラチンは、数多くのがんに有効性が認められている抗がん剤です。適応となるがんは、胃がん、肺がん、膀胱がん、前立腺がん、卵巣がん、尿管がん、悪性リンパ腫などで、多くの場合は他の治療薬と併用して使用されます。シスプラチンは、がん細胞のDNAに結合し、がん細胞を死滅させます。
シスプラチンは、睾丸腫瘍、膀胱がん、腎盂・尿管腫瘍、前立腺がん、卵巣がん、頭頚部がん、非小細胞肺がん、食道がん、子宮頸がん、神経芽細胞腫、胃がん、小細胞肺がん、胆道がん、子宮体がん、悪性リンパ腫など、多くのがんに対して治療効果を期待できる抗がん剤です。
シスプラチンの有効成分は、同名のシスプラチンで、がん細胞のDNAに結合して細胞の分裂を止めるので、がん細胞を死滅させます。
シスプラチンは注射で投与されます。薬の量や投与頻度、休薬期間などは、がんの種類や患者さんの状態で異なります。
シスプラチンは、がんの治療において広く用いられている抗がん剤ですが、腎臓にダメージを与えるとされています。この点から、シスプラチンを用いた治療を行う場合には、腎臓へのダメージを減らすために点滴前後に1〜2リットルの輸液を点滴して、尿の量を増やすようにします。これは、腎臓におけるシスプラチン濃度の低下や、毒性の原因のひとつであるシスプラチンの反応抑制、シスプラチンと腎臓の接触の軽減のために行われています。
さらに、点滴を行う場合には可能な限り水分摂取を行うことが大切とされていますので、シスプラチンの点滴の際には水やスポーツドリンクなど、いつもより多めの水分摂取を心がけるようにしましょう。ただし、大量の水分を摂取する必要はないため、「いつもより多め」を意識する形で摂取しましょう。
シスプラチンの服用に関して、基本的な注意点がいくつかあります。
シスプラチンで治療中の患者さんのほとんどが、悪心、嘔吐、食欲不振などの消化器症状が起こるといわれています。消化器症状を自覚した場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
シスプラチンを服用中に、腎障害が起こることがあります。担当医は患者さんの状態を把握するために、定期的に血液検査を行う場合があります。
シスプラチンで治療中に、骨髄抑制が起こる可能性があります。骨髄抑制とは、抗がん剤によって血液細胞を作る骨髄の働きが抑えられることを意味します。骨髄では病原体から身体を守る白血球も作っているため、骨髄抑制になると白血球の数が減り、感染症にかかりやすくなります。シスプラチンで治療中に、感染の兆候である発熱や咳、痰、皮膚の腫れ、尿の混濁などの体調の変化を自覚した時には、すぐに医療機関に相談した方がよいです。
また、他の抗がん剤や放射線療法とシスプラチンを併用すると、骨髄抑制が強く起こる場合があるので注意が必要です。
他の抗がん剤や放射線療法、抗生剤と併用すると、骨髄抑制や腎障害、神経障害などの副作用が強く出ることがあるので注意が必要です。
シスプラチンは、腎障害を起こしやすい薬として知られています。シスプラチンによる腎臓への影響を減らすために、シスプラチン投与前や投与後に十分な輸液をすることが推奨されています。
シスプラチンを服用中に副作用が出ることがあるので、体調に変化があった時にはすぐに担当医に相談するようにしましょう。副作用によっては、服用を中止する必要があります。
シスプラチンの服用中に見られる可能性のある副作用には、以下のようなものが挙げられます。
今回挙げた症状以外でも、シスプラチンによる副作用の場合もあるので心配なことがあれば担当医に聞いてみるようにしてください。
シスプラチンの副作用の中には、「しゃっくり」も挙げられています。日常生活の中でもしゃっくりが出ることはありますが、抗がん剤の副作用として起こる場合にはなかなか止まらないことがあります。普段のしゃっくりの場合は冷たい水を飲んだり、息をこらえてみるなどの方法で止めようとする方もいますが、副作用として出たしゃっくりがなかなか止まらない場合には、薬を用いて止める場合もあります。しゃっくりを止めるための確定的な薬剤はないものの、クロルプロマジンやメトクロプラミドなどの薬が使用されています。
そのほか、柿蔕(シテイ)と呼ばれる柿のヘタを煎じたものがしゃっくりに有効な場合もあり、薬として使用されるケースもあります。
シスプラチンの服用中に、重大な副作用が起こることがあります。適切に対処しないと命に関わる場合もあるので注意が必要です。シスプラチンを服用中に、体調に変化があった時にはすぐに担当医に相談するようにしてください。
副作用として急性腎障害が起こることがあります。定期的な血液検査で腎機能に変化がないか調べる必要があります。シスプラチンで治療中に、尿が赤い、尿の量が少ない、などの症状を自覚したらすぐに担当医に相談しましょう。
シスプラチンで治療中に、血液細胞を作る骨髄の働きが低下する骨髄抑制という副作用が起こることがあります。血液細胞には、赤血球、白血球、血小板が含まれます。骨髄抑制によって、赤血球が減ると貧血になり、息切れや倦怠感、動機などの症状が出ます。白血球が減ると感染症にかかりやすくなり、血小板が減ると出血しやすくなります。
シスプラチンで治療中に、ショックやアナフィラキシーを起こすことがあります。ショックやアナフィラキシーは、強いアレルギー反応のことですが、適切な処置をしないと命に関わる場合があるので注意が必要です。
シスプラチンで治療中に、難聴や耳鳴りなどの副作用が起こることがあります。
脳梗塞や一過性脳虚血発作など、脳の障害が起こることがあります。
シスプラチンによる副作用で、心筋梗塞や狭心症など心臓に異常が起こることがあります。他にも、不整脈や心不全などが引き起こされる可能性があります。胸の痛みや息切れ、動悸などの自覚症状がある場合には、すぐに担当医に相談しましょう。
シスプラチンで治療中に、劇症肝炎、肝機能障害、黄疸などの異常が起こることがあります。症状に応じて、シスプラチンの減量や中止を検討します。
副作用で消化管潰瘍や消化管出血、消化管穿孔が起こることがあります。内視鏡や腹部X線検査、腹部CT検査など適宜必要な検査を行います。症状に応じて、シスプラチンの減量や中止を検討します。
急性膵炎は、命に関わる可能性のある副作用なので注意が必要です。腹痛や背部痛、嘔吐、発熱などは、急性膵炎の症状としてよく見られるものです。