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リツキサンは、B細胞性非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病などの血液のがんに対する治療薬として使われます。ここでは、リツキサンの作用や特徴、効果、副作用、注意点などについて説明します。ただし、他の治療薬と同じように、リツキサンの効果や副作用は個人によって異なることも理解しておいてください。
「リツキサン」は一般名をリツキシマブといい、2001年に発売開始された薬です。リツキサンの特徴は、マウスの成分とヒトの成分でできた「抗CD20抗体」である点が挙げられます。抗体は、細菌など体にとって異物と認めた場合、それらと結びついて免疫系が体から排除することを助ける役割を持っています。
このように、抗体は標的を認識して、その標的と結合する能力を持っていますが、モノクローナル抗体薬であるリツキサンは、「CD20抗体」と呼ばれるタンパクに結合するという特徴を持っています。CD20抗体とは、悪性化したBリンパ球と成長段階にある特定の正常Bリンパ球に存在しているタンパクですが、リツキサンと結合したリンパ腫細胞に対して免疫反応が強く起こり、マクロファージがリンパ腫を異物と認識して攻撃します。
このように、リツキサンはCD20を持っている細胞のみ攻撃を行い、逆にCD20を持っていない細胞には影響を与えないといった特徴を持っています。すなわち、CD20という目印を持っているタンパクにだけ結合することから、これまで使用されてきた化学療法と比較した場合には、正常な細胞への副作用が少ない点もリツキサンの特徴のひとつとして挙げられています。
リツキサンは、単独で治療に用いる場合もありますが、「R-CHOP療法」のように他の薬と組み合わせた治療を行うケースもあります。このR-CHOP療法とは、リツキサンにエンドキサン(一般名シクロフォスファミド)とアドリアシン(一般名ドキソルビシン)、オンコビン(一般名ビンクリスチン)、プレドニン(一般名プレドニゾロン)という4種類の抗がん剤を組み合わせた治療方法となっています。
それまで、非ホジキンリンパ腫の標準的な治療としてはCHOP療法が用いられていましたが、リツキサンが登場してからはR-CHOP療法が用いられるようになってきました。
R-CHOP療法を用いる場合には、1コースを21日間として治療を進めていきます。まず1日目にはリツキサン、アドリアシン、エンドキサン、オンコビンを点滴します。そして1〜5日目にプレドニンを内服しますが、スケジュールは場合により異なることもあるため、実際の治療の進め方については担当医師に確認しましょう。
また、最初に治療を行う場合には入院して投薬などを行っていくケースが多いものの、大きな問題が見られない場合には2回目以降は通院しながら治療を受けていくことが一般的となっています。
治療を行うにあたり、病巣が限局しており放射線照射が可能な場合には、3コース行ったのちに放射線療法を行いますが、病巣が限局していないケースについてはR-CHOP療法を6〜8コース行うといったスケジュールで治療を行います。
リツキサンは、がんだけでなく、血管炎や腎炎、膠原病、臓器移植時の拒絶反応抑制など、さまざまな病気に対して使用される薬です。がんに対して使用される時には、主にB細胞性非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病などの血液のがんが対象となります。リツキサンは、がん細胞を標的として結びつくように設計されており、リツキサンと結合したがん細胞は身体の中で異物と認識されて破壊されます。
がん細胞は、増殖を繰り返して正常な細胞を傷害し・転移することでがんのない組織でも増殖していきます。
悪性リンパ腫は白血球のひとつであるリンパ球のがんですが、これは「CD20抗原」と呼ばれるタンパク質が、B細胞性リンパ腫細胞の表面に現れている状態です。これに対してリツキシマブは、リンパ球B細胞やB細胞性リンパ腫細胞に現れているCD20抗原と結合して、結合した細胞を破壊(溶解)することによって、これらの細胞の増殖を抑える働きを持っています。
また、リツキシマブはB細胞やB細胞で作られる抗体に関わるさまざまな病態に対して有用である、と考えられている点も特徴のひとつです。以上から、リツキシマブは多発血管炎症性肉芽腫症や難治性のネフローゼ症候群、特発性血小板減少性紫斑病などの治療において用いられる場合もあります。そのほかにも、ABO血液型不適合の腎移植や肝移植において、抗体関連型拒絶反応を抑える目的でリツキシマブが用いられているケースもあります。
リツキサンの効果を期待できる主な血液のがんは、以下のようなものです。
液のがん以外では、以下のような病気に効果を期待できます。
リツキサンの有効成分であるリツキシマブが血液中のB細胞の表面に存在するCD20抗原に結合することで、がん細胞の増殖を抑えます。B細胞は、免疫に関わる細胞の1つですが、がんになると異常に増えて身体に悪影響を与えます。CD20抗原は、B細胞の表面に存在するタンパク質で、B細胞の活性化や増殖の調節に関わっています。
リツキサンの用法・用量は、がんの種類や対象となる病気によって異なります。 例えば、成人のB細胞性非ホジキンリンパ腫に対して使用する場合には、1回量375㎎/㎡(体表面積)を1週間間隔で点滴静注します。最大投与回数は8回となっています。 成人の慢性リンパ性白血病に対して使用する場合には、初回に1回量375㎎/㎡、2回目以降は1回量500㎎/㎡を併用する他の治療薬の投与サイクルに合わせて、1サイクルあたり1回点滴静注します。最大投与回数は6回となっています。 患者さんの状態を考慮し、投与量は適宜調整されます。
リツキサンの服用に関して、基本的な注意点がいくつかあります。
インフュージョンリアクションは、リツキサンのような分子標的薬の点滴時に見られる副作用のことです。インフュージョンリアクションの発症機序は明らかになっていませんが、がん細胞が薬の作用で急速に壊され、炎症やアレルギー反応を引き起こす物質が放出されるからではないかと考えられています。インフュージョンリアクションは、リツキサンの投与中または投与後24時間以内に多く起こり、症状は発熱、咳、痛み、めまい、呼吸困難、頭痛、発疹、かゆみ、寒気などです。
リツキサンを投与された患者さんの約90%にインフュージョンリアクションが起こったという報告があり、症状は軽微から中等度でした。また、インフュージョンリアクションは、リツキサンの初回投与時に起こりやすいといわれています。もし、リツキサンで治療中に異常が起こった場合には、すぐに投与を中止し、酸素吸入や解熱鎮痛剤、副腎皮質ホルモン剤、抗ヒスタミン剤などの投与を行い、症状が改善するまで注意深く経過を見る必要があります。
リツキサンをがんに対して使用している時に、がんが急速に死滅し、腫瘍崩壊症候群が起こることがあります。血液中のカリウムやカルシウム、リン、尿酸の量が増えて、急性腎障害やけいれん、不整脈などの異常が起こります。異常を認めた場合には、リツキサンの投与を中止し、適切な処置を行います。
リツキサンを血液のがんに対して使用する場合には、CD20抗原の検査を行い、陽性が確認された患者さんにのみ投与する必要があります。
リツキサンを投与中に、よく起こるインフュージョンリアクションを軽減するために、リツキサンを投与する30分前に抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛剤、副腎皮質ホルモン剤などの投与を行います。リツキサンの投与中に異常を認めた場合には、すぐに投与を中止する必要があります。
リツキサンの治療中に副作用が出ることがあるので、体調に変化があった時にはすぐに担当医に相談するようにしましょう。副作用によっては、服用を中止する必要があります。 リツキサンの服用中に見られる可能性のある副作用には、以下のようなものが挙げられます。
今回挙げた症状以外でも、リツキサンによる副作用の場合もあるので心配なことがあれば担当医に聞いてみるようにしてください。
リツキサンの服用中に、重大な副作用が起こることがあります。適切に対処しないと命に関わる場合もあるので注意が必要です。リツキサンを服用中に、体調に変化があった時にはすぐに担当医に相談するようにしてください。
リツキサンの投与後に、B型肝炎ウイルスが再活性化し、劇症肝炎または肝炎の悪化による肝不全が起こることがあります。肝不全は、命に関わる病気です。異常を認めた場合には、すぐに抗ウイルス剤の投与などの適切な処置を行う必要があります。
リツキサンの投与中に、肺炎や敗血症などの命に関わるような感染症が起こることがあります。感染症の原因は、細菌、真菌、ウイルスなどです。治療期間中に感染症を疑うような発熱や咳、血圧低下などの症状が出ていないか、注意する必要があります。
リツキサンの治療中に、不整脈や狭心症、心筋梗塞などが起こったという報告があります。治療中に、胸痛や呼吸困難、動悸などの心障害を疑う症状が起きた場合には、適宜心エコーや心電図などの心機能検査を行います。心障害を認めた場合には、リツキサンの休薬、中止を検討します。
CHOP療法にリツキサンを併用する場合、リツキサン単独では見られない副作用が現れることがあります。具体的には、脱毛、貧血、吐き気、嘔吐、食欲不振、全身の倦怠感、味覚の変化、口内炎、便秘、手足のしびれ、感染症、膀胱炎、心臓への影響などが挙げられます。
R-CHOP療法後に体調の変化を感じた場合は、迷わず担当医にご相談ください。
BR療法の副作用は、点滴中や点滴後の早い時期に現れることがあります。主な症状として、注射部位の赤みや痛み、吐き気、嘔吐、食欲不振、発熱、悪寒、頭痛、めまい、口の中の痛み、皮膚のかゆみや発疹、髪質の変化、咳、息切れ、息苦しさ、出血などがあります。
治療回数が増えると、心臓の機能が低下する場合もあります。BR療法後に体調の異変を感じたら、担当医に早めに相談しましょう。
現在B型肝炎にかかっている方、または過去にかかったことのある方がリツキサンを使用すると、ウイルス性肝炎が悪化したり再発する可能性があります。
肝炎の悪化や劇症肝炎が起こると、命に関わることもあるため、注意が必要です。リツキサンの治療中や治療後は、ウイルス性肝炎の悪化や再発を予防するため、定期的に肝機能検査やB型肝炎ウイルスの検査を行います。
倦怠感、発熱、白目や皮膚の黄染(黄疸)、尿の色が濃くなる、腹部の張りや痛み、吐き気、嘔吐、食欲不振などの症状が現れた場合は、速やかに担当医にご相談ください。
リツキサンは、抗体を作るもととなるBリンパ球を減少させる薬です。そのため、リツキサンを使用している間は抗体が作られにくく、予防接種の効果が十分に得られない可能性があります。
また、予防したい感染症にかかってしまうリスクもあります。ワクチン接種を希望される場合は、事前に必ず担当医へ相談しましょう。