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日本人では大腸がんの次に多い胃がん(※)。手術方法や薬剤など、治療法は依然と比較にならないほど進歩してはいますが、相変わらず死亡率も高いがんです。ここでは胃がんの特徴や治療内容、特に抗がん剤治療について詳しく説明します。
※参照元:国立がん研究センター がん情報サービス https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
目次
早期の胃がんは自覚症状がほとんどなく、進行しても症状に乏しい場合が珍しくありません。主な症状はみぞおちの痛みや不快感、胸やけ、吐き気、食欲低下などです。出血によって起こる貧血や黒い便(タール便)がきっかけで見つかることもあります。健康診断などで内視鏡検査を受け、偶然発見されるケースも多いでしょう。また、食事がつかえるような感じがしたり、体重が減ったりするような症状がある場合は、胃がんが進行している可能性があります。
胃がんのステージは(病期)は、3種類のカテゴリー(TMN分類)の組み合わせによって決められます。
※参照元:国立がん研究センター がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/treatment.html
がんが粘膜層にとどまっており、リンパ節転移の可能性が極めて低い早期のがんであれば、内視鏡治療による内側からの切除が選択されます。それが難しい場合は手術が推奨されており、がん病変を含む胃の一部もしくは胃をすべて切除します。同時に胃の周囲のリンパ節を取り除くのが一般的で、食べ物の通り道をつくり直す消化管再建も行ないます。
胃がん細胞は放射線にあまり反応せず、また胃の周囲の臓器が放射線に弱いので、胃がんに対する放射線治療はあくまでも補助的な治療という位置づけです。
また、がんの治療が妊娠・出産に影響する可能性もありますので、将来子どもを産むことを希望している場合には、妊孕性の温存が可能かどうかを担当医と相談してみてください。
胃以外の臓器やリンパ節への転移がなく、がんが粘膜層内にとどまっている場合には内視鏡治療を検討します。内視鏡治療では、胃の内側からがんを切除できるので、治療後の身体への負担が手術に比べて小さいです。
がんを確実に切除できたかどうかは、切除した組織を顕微鏡で見て診断します。もし、内視鏡治療だけでがんを取り切れなかった場合やリンパ節転移の可能性がある場合には改めて手術が必要になることがあります。
内視鏡治療だけではがんの切除が難しいと判断された場合で、胃以外への臓器に転移がない時に手術を検討します。胃がんの手術には、開腹手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援下腹腔鏡下手術があります。
開腹手術は、おなかを切って行う手術です。腹腔鏡下手術では、おなかに小さい穴を開けて、腹腔鏡とよばれるカメラや専用の器具を挿入し、モニター画面を見ながら手術を行います。
ロボット支援下腹腔鏡下手術の場合には、ロボットを使用して腹腔鏡下手術を行います。開腹手術に対して、腹腔鏡下手術やロボット支援下腹腔鏡下手術の方が、傷が小さいため術後の回復が早いといわれています。
しかし、腹腔鏡下手術やロボット支援下腹腔鏡下手術は高度な技術が必要なので、どの施設でも行うことができるわけではありません。また、胃がんの大きさや進行度によって適応となる手術方法が異なります。
胃がんの薬物療法は、大きく分けて2つです。胃がんの再発を予防する目的で手術と組み合わせて行う補助療法と、手術が難しいようながんの進行を抑えたり、症状をコントロールする目的で行う薬物療法があります。
また、使用する薬物の種類によって、化学療法、分子標的療法、がん免疫療法とよばれます。患者さんの全身状態やがんの進行度、合併症などを考慮し、どの薬物療法を行うか決定されます。
抗がん剤を使用する薬物療法を化学療法とよびます。抗がん剤によって、がん細胞の増殖のために必要なDNAの合成や細胞分裂の過程を妨げ、がんの進行を抑えます。抗がん剤にはいくつかの種類がありますが、胃がんに対しては単独の抗がん剤を使用する場合と複数の抗がん剤を組み合わせて使用する場合があります。
分子標的薬を使用する薬物療法を分子標的療法とよびます。分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わるタンパク質や血管に作用し、がんの進行を抑えます。
分子標的薬にはいくつかの種類がありますが、胃がんの場合には、がん細胞の増殖に関わるHER2とよばれるタンパク質を標的とした薬剤が使われることがあります。また、がん細胞に栄養を届けるための血管の細胞に発現するタンパク質であるVEGFR-2を標的とした薬剤が使われる場合もあります。
手術ができない胃がんや再発した胃がんに対して、がん免疫療法が適応となります。がん免疫療法では、免疫チェックポイント阻害薬が使用されます。
免疫の機能が正常な場合には、がんなどの異物は免疫細胞によって攻撃を受けます。しかし、がん細胞は、免疫細胞による攻撃を免れるために免疫細胞にブレーキをかけていることが明らかになりました。免疫チェックポイント阻害薬は、攻撃を避けるためのブレーキを解除し、本来の免疫の力を使ってがん細胞を攻撃できるようにします。
術前補助化学療法は、手術の前に化学療法を行う治療法です。がんが進行していて、手術をしたとしても目に見えないがんが残り、最終的にがんの完治が難しいと考えられる場合に、術前補助化学療法が検討されます。
手術で胃を切除した後では、体力が落ちていて化学療法を思うように行えないこともあるので、手術前の元気なうちに化学療法でがんを叩いておいた方がよいと考えられています。
手術で目に見えるがんを取り除いたとしても、目に見えないほど小さいがんが残っていると、がんが再発する恐れがあります。術後補助化学療法とは、手術の後に化学療法を行うことで、がんの再発を抑える治療法です。手術で切除した胃を顕微鏡で調べ、がんの進行状態を正確に把握してから、術後補助化学療法を行うかどうか検討します。
胃がんに対する抗がん剤治療では、従来の細胞傷害性抗がん剤や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などが用いられています。細胞傷害性抗がん剤は正常な細胞にもダメージを与えるため、どうしても副作用の問題がついてまわります。抗がん剤をやめたいと思う方がいるのは、この副作用によるものが影響していると考えられます。
血液細胞の数など検査でわかる副作用と、吐き気や脱毛など自覚症状としてわかる副作用とがありますが、程度は人それぞれです。副作用を予防する薬も開発されてきましたが、それでもつらい症状には違いありません。
近年注目されている分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬は、細胞傷害性抗がん剤とは根本的にメカニズムが異なり、正常な細胞に影響を与えないことから副作用も少ないと考えられています。
分子標的薬は細胞傷害性抗がん剤とは異なり、がん細胞を直接攻撃するわけではありません。あくまでもがん細胞が増殖するシステムに関与する補助的な薬です。しかし、分子標的薬の単独投与で高い制がん効果が現れる患者さんもいます。それにはNK細胞の活性度が大きく関わっていると考えられ、だとするとANK免疫細胞療法と分子標的薬の併用は理想的だといえるかもしれません。
分子標的薬の種類によってはNK細胞のがんを攻撃するスピードを上げて相乗効果も期待できるのです。
どんながんも治る魔法の薬はありません。
ゆえに、保険治療の抗がん剤だけでは緩和や延命が目的になることもありますが、ほかの治療と併用することで好転することもあります。できる治療すべてを試す覚悟が大事だということも覚えておきましょう。
治療のひとつの選択肢として挙げられるのが、ANK免疫細胞療法。がん退治の本命細胞である「NK細胞」を活性化させてがん治療を行っていく免疫療法のひとつです。
以下の動画で、ANK免疫細胞療法のしくみを詳しく紹介していますのでぜひご覧ください。
吐き気や嘔吐は、脳の嘔吐中枢が抗がん剤によって刺激されると起きます。胃がんの治療で用いられるティーエスワン、シスプラチン、オキサリプラチンなどは、吐き気や嘔吐を起こす可能性のある抗がん剤です。
吐き気や嘔吐の症状が出るタイミングは、抗がん剤を投与してから数時間後のときもあれば、翌日以降に起こる場合もあります。吐き気や嘔吐の症状は、3~4日ほどで改善することが多いといわれています。食べる量が多いと吐き気や嘔吐の原因になる場合があるので、少ない量をゆっくり食べるとよいかもしれません。
また、身体を締め付けない衣類の着用や室内環境の調整などによって症状が和らぐことがあります。また、抗がん剤による吐き気や嘔吐を防ぐ目的で処方された吐き気止めを内服すると効果を期待できるかもしれません。
吐き気や嘔吐により食事ができない状態が続く場合や激しい嘔吐が続いている場合、十分な水分がとれていない場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
抗がん剤は、血液細胞を作る骨髄とよばれる組織の働きを抑制するため、病原体から身体を守る白血球の数が減り、感染症にかかりやすくなります。また、感染症にかかりやすいだけでなく、重症化しやすいことが知られています。
抗がん剤を使用している時には、感染症を予防するためのセルフケアが大切です。食事の前や外出の後などに、手洗い、うがいをすることによって感染症を予防できます。また、感染のリスクを下げるために、人ごみの多い場所を避けたり、外出時にマスクをするのもよいです。1日1回は体温を測ると、感染の兆候にすぐに気づいて対処できるのでおすすめです。
37.5℃以上の発熱を認めたら、早めに医療機関に相談しましょう。
抗がん剤による副作用で、吐き気や嘔吐、下痢などが起こると食欲不振になることが多いです。がんの治療で使用されるティーエスワン、シスプラチン、オキサリプラチン、カペシタビンなどは副作用で食欲不振が起こる可能性があります。
食欲不振の時には、調子のよい時に食べたいものを食べるようにしたり、食べやすい味付けや温度の食べ物を探してみるとよいかもしれません。食べる量を少なめにする、数回に分けて食べるなどのように工夫をしてみるとよいでしょう。食べたいものがみつからない場合や足りない栄養素を効率よく補いたい場合には、栄養補助食品の利用を検討するのも1つの方法です。栄養補助食品を選ぶ時には、医師や看護師、栄養士などに相談してみるのがおすすめです。
食事や水分が全くとれない場合や体重が減っているような場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
抗がん剤によって腸の粘膜が傷ついたり、腸の動きに影響が出ると下痢が起こります。下痢の症状が出るタイミングは、抗がん剤の投与直後や数日後などです。んの治療で使用されるティーエスワン、シスプラチン、オキサリプラチン、カペシタビンなどの抗がん剤は下痢の症状を起こす可能性があります。
下痢の症状がある時には、脱水症状を見逃さないことが大切です。自分でわかる脱水症状としては、尿量減少、口腔内の乾燥、脱力、頭痛、めまいなどがあります。こまめに水分補給をして、温かくて消化の良い食事を食べるようにしましょう。
下痢が3日以上続く、1日4〜6回以上の下痢がある、37.5℃以上の発熱がある、強い腹痛がある、脱水症状がある、などのような場合には、すぐに医療機関に相談しましょう。
倦怠感は、抗がん剤の治療をしている患者さんのほとんどに起こるといわれている症状です。だるさや疲れやすさ、脱力感、やる気が出ない、などの症状を倦怠感と考えます。胃がんの治療で使用されるティーエスワン、シスプラチン、ペシタビンなどの抗がん剤は倦怠感を起こす可能性があります。
倦怠感は、熱や痛みで体力が奪われたり、抗がん剤の副作用による嘔吐や下痢などによって十分な栄養や水分がとれずに脱水や貧血になると起こります。また、精神的なストレスも倦怠感の原因になります。倦怠感によって食事が十分にとれない時には、水分補給をこまめにしたり、食べやすいものを食べたいときに食べるようにするとよいです。
強い倦怠感が続いて、食事や水分を十分にとれない時には早めに医療機関に相談しましょう