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放射線治療は、手術や薬物療法と共に、がんの3大治療法の1つです。放射線治療では、がんの部分に放射線をあてることで、がん細胞にダメージを与えます。放射線治療の仕組みや目的、副作用などを治療前に知っておくと安心です。
がんの3大治療法は、手術、薬物療法、放射線治療です。放射線治療は、がんの部分に放射線をあてて、がん細胞にダメージを与える治療法です。
放射線治療は、手術と同じように局所的な治療法ですが、手術のように臓器を取り除いたりしないため、身体への負担は減らすことができます。
放射線治療は、単独で行われる場合もあれば、手術や薬物療法と併用される場合もあります。例えば、手術前に放射線治療を行い、がんを小さくしてから手術で取り除くような方法もあります。
放射線治療の時間は治療内容によって異なりますが、一般的に10~30分で、土日や祝日を除いて毎日行います。放射線治療は、治療内容や体調にもよりますが、通院での治療も可能です。
がん細胞は、分裂や増殖の力が強いですが、傷つきやすかったり、傷ついた後に修復する力が弱いという特徴があります。一方で、正常な細胞は、がん細胞よりも傷ついた後の修復力が強いといわれています。
がんの部分に放射線があたると、がん細胞はダメージを受けます。放射線治療を繰り返すごとにがん細胞のダメージは大きくなり、最終的には死滅します。正常な細胞も放射線によるダメージは受けますが、翌日までには修復できることが多いです。
つまり、放射線治療とは、がんの周囲の正常な細胞が耐えられるくらいの放射線を毎日あてることで、がん細胞だけを死滅させる治療法です。
放射線治療は、目的によって根治照射と緩和照射に分けられます。根治照射と緩和照射の違いについて説明します。
根治照射とは、がんを放射線によって死滅させ、根治を目指す治療法です。根治とは、がんの完全な治癒を意味します。
根治照射の対象となるのは、主に他の部位に転移のないがんです。例えば、肺がん、頭頚部がん、前立腺がん、子宮がん、食道がんなどが根治照射の対象となります。
放射線治療単独によるものだけでなく、手術や抗がん剤と併用して行う放射線治療も根治照射に含まれます。
手術や薬物療法と組み合わせて放射線治療を行うと、治療効果を高めることができます。手術の補助療法として放射線治療を行うタイミングは、手術前、手術中、手術後があります。
手術前に放射線治療を行う術前照射では、手術中に散らばる可能性のあるがん細胞を死滅させたり、がんをできるだけ小さくして手術しやすくすることを目的としています。
手術中に放射線治療を行う術中照射では、病変部や周囲の組織を目で確認できるので、確実にがんに放射線をあてることができます。術中照射を行えば、がんの周囲にある放射線に弱い腸管などへの照射を避けられるというメリットがあります。
手術で取り切れずに残ったがん細胞を死滅させ、再発の可能性を下げるために手術後に放射線治療を行うことを術後照射とよびます。
また、薬物療法の補助療法として放射線治療が行われる場合もあります。例えば、血液がんの治療法の1つである造血幹細胞移植の前に、がん細胞の減少や移植後の拒絶反応の予防目的で放射線治療を行います。
緩和照射とは、がんそのものを治すのではなく、がんの進行によって引き起こされるさまざまな症状を改善し、患者さんの生活の質を向上する目的で行われる放射線治療です。
例えば、がんが大きくなって、神経の圧迫により痛みを感じる場合に、緩和照射を行うと痛みが軽くなる可能性があります。他にも、脳転移による頭痛や嘔吐、骨転移による痛み、がんによる出血や麻痺、狭窄などに対する効果を期待できます。
放射線治療の種類は、外部照射と内部照射の2つに分けられます。外部照射は身体の外から放射線をあてる方法で、内部照射は身体の中に放射線の出る物質を入れて治療する方法です。
外部照射では、身体の外からがんに向かって、さまざまな角度から放射線をあてます。外部照射は、放射線をあてるタイミングや放射線をあてる範囲などによって、分割照射治療、術中照射治療、定位放射線治療に分類されます。
分割照射治療では、広い範囲に、何回かに分けて放射線をあてます。患者さんの状態にもよりますが、治療期間は3~8週間くらいです。がんの治癒だけでなく、手術後のがんの再発予防やがんによる痛みの緩和を目的として、分割照射治療が行われることがあります。
術中照射治療では、手術中に、がんやがんが残っている可能性がある場所に直接、放射線をあてて治療します。手術中だと、がんや周囲の組織を確認できるので、放射線をあてたくない臓器を避けられるというメリットがあります。
定位放射線治療では、多方向から集中的に、正確な位置精度を保ちながら放射線をあてます。
放射線を出すラジウムやイリジウム、ヨードなどの物質は放射線源とよばれます。内部照射では、放射線源を体内に入れることで、身体の中からがんへ放射線をあてて治療を行います。
放射線源を体内に入れる方法には、組織内照射法と腔内照射法があります。組織内照射法は、口腔がんや舌がん、乳がん、前立腺がんなどに対して行われ、腔内照射法は肺がん、食道がん、子宮頸がんなどに対して行われます。
放射線治療を検討する場合には、まず放射線腫瘍医の診察を受け、治療に関する説明を聞きます。診察を受ける時には、治療方法や治療期間、期待される効果、副作用などについてよく聞いておくようにしましょう。
放射線治療を受けることになったら、治療計画のために実際の治療を模したベッドに寝てCTやMRIを撮影し、治療中の姿勢や放射線をあてる範囲、方向などを決めます。放射線をあてる場所が決まったら、治療のための目印として皮膚に印をつけられることがあります。
次に、がんのある場所、がん細胞が残っている可能性のある場所、正常な場所に対して、放射線をあてる量や方向、回数などを検討し、治療計画が立てられます。
放射線照射は、放射線治療室で行われます。治療中は、操作室から診療放射線技師が見守っているので気分が悪くなったりしたら、すぐに伝えましょう。
治療内容によって違いはありますが、治療時間は約10~30分です。治療期間中は、医師が定期的に診察し、放射線治療による副作用に対する薬の処方や処置、治療計画の変更によるCT撮影などを行います。
他の治療法と同様に、放射線治療でも副作用が起こる場合があります。放射線治療の副作用には、治療中や終了直後に起こる急性期のものと、治療が終了してから半年~数年たった後に起こる晩期のものがあります。
また、副作用には全身的なものと放射線をあてている場所に起こる局所的なものがあります。副作用は、治療後しばらく経ってから起こることもあるので、治療後も定期的に医師の診察を受けるようにしましょう。
放射線治療による急性期の副作用は、全身的なものと局所的なものに分けられます。急性期の全身的な副作用としては、疲労感やだるさ、食欲不振、貧血、感染などが挙げられます。
放射線治療中に感じる疲労感やだるさなどは、放射線による影響だけでなく、がんになったことによる気持ちの落ち込みや外来通院の疲れによっても起こる可能性があります。治療中は、無理をせずに休むように心がけ、十分な睡眠をとるようにしましょう。
また、放射線治療によって血液細胞を作る骨髄の機能が低下することがあります。骨髄の機能が低下すると、白血球や赤血球、血小板の数が減り、感染症や貧血、出血しやすくなるなどの副作用が起こります。
急性期の局所的な副作用としては、放射線をあてた部分の皮膚の痛みや乾燥、脱毛、口の渇き、味覚異常、咳、息切れ、軟便、下痢などが見られることがあります。
放射線治療による晩期の副作用・後遺症には、妊娠や出産への影響、二次がんの発生、放射線肺炎、放射性直腸炎、放射線膀胱炎などがあります。
照射する放射線の量が多いと、男性でも、女性でも、将来的に不妊を引き起こす可能性があります。将来、妊娠や出産を希望する方は医師に相談するようにしましょう。
放射線は、がんを治す力がある一方で、がんを作り出してしまう力もあります。放射線治療後の副作用として、二次がんといって、新たながんが発生する可能性があります。
また、放射線による影響で肺炎や直腸炎、膀胱炎が起こる場合があります。放射線肺炎では、発熱や呼吸困難、長く続く咳、直腸炎では長引く下痢や下血、膀胱炎では血尿や排尿時痛などの症状が見られます。
<この記事を書いたのは・・・>
如月 真紀(きさらぎ まき)
医師、医学博士、総合内科専門医。都内の大学病院勤務を経て、現在はアメリカで研究中。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、医療系コンテンツ制作など幅広く手がけている。研究の傍ら、医学の知識や医師の経験を活かし、患者や患者家族のためになるコンテンツ作成を目指している。
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