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ポートラーザは、手術で切除不能な進行・再発の肺がんに使用される治療薬です。ここでは、ポートラーザの作用や特徴、効果、副作用、注意点などについて説明します。ただし、他の治療薬と同じように、ポートラーザの効果や副作用は個人によって異なることも理解しておいてください。
ポートラーザは、切除不能な進行・再発の扁平上皮非小細胞肺がんを患う方に対し、抗がん効果を発揮すると言われている薬剤です。
EGFRという上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor)は、細胞の増殖に関係する受容体です。EGFRシグナルが過剰に活性化すると、がんの増殖・転移に大きく寄与してしまうと言われています。ポートラーザは、EGFRに対して作用するヒトIgG1モノクローナル抗体薬(抗EGFR抗体薬)のことで、EGFRに結びつき、シグナル伝達を阻害してがんの増殖を抑制する働きをもっています。
加えて、がん細胞と結びついてポートラーザを認識したNK細胞などの免疫細胞が、がん細胞を直接攻撃する抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)によって、がん細胞を除去する効果が期待できると考えられています。
臨床試験では、EGFRが多く見られるがんに高い効果が認められたと言われています。しかし、EGFRの発現が少ない症例の数が限定的だったり、EGFRの発現の不均一性や検出が困難だったりする点が考慮され、EGFRの発現状況を問わずに適応が認められています。
ポートラーザ点滴静注液800mgは、ネシツムマブ(遺伝子組換え)を有効成分としています。ネシツムマブは、ヒト上皮成長因子受容体に対して作用する遺伝子組換えヒトIgG1モノクローナル抗体です。ネシツムマブは、マウスミエローマ(NS0)細胞によって産生されています。
ネシツムマブは、451個のアミノ酸残基からなるH鎖2本と、214個のアミノ酸残基からなるL鎖2本から構成される糖タンパク質(分子量は約148,000)です。
ポートラーザは、マウスミエローマ細胞を使用して製造されています。製造工程の培地成分として、ウシ血清由来成分と呼ばれるアルブミンを使っているのが特徴です。 使用されている添加剤は、以下をご覧ください。
ポートラーザは、手術で切除不能な進行・再発の扁平上皮非小細胞肺がんに対して使用されます。肺がんは、細胞の形の違いによって大きく小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分けられます。非小細胞肺がんには、扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんが含まれます。
ポートラーザは、がん細胞の増殖に関わる分子に作用し、がん細胞が増えることを阻止します。
ポートラーザは、手術で切除不能な進行・再発の肺がんに対する効果を期待できます。
ポートラーザの有効成分は、ネシツムマブです。有効成分であるネシツムマブが、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)に働きかけ、がん細胞が増えないようにします。がん細胞の表面に存在するEGFRは、がん細胞の増殖に関わっています。
ポートラーザは、1回800㎎を約1時間かけて点滴静注し、週1回投与を2週間連続し、3週目は休薬します。これを1コースとし、繰り返します。患者さんの状態を考慮し、投与量は適宜調整されます。
ポートラーザを治療薬として使用する場合には、基本的な注意点がいくつかあります。
インフュージョンリアクションは、ポートラーザのような分子標的薬の点滴時に見られる副作用のことです。なぜ起こるのかは明らかになっていないですが、がん細胞が薬の作用で急速に壊され、炎症やアレルギー反応を引き起こす物質が放出されるからではないかといわれています。インフュージョンリアクションの症状は、発熱、頭痛、発疹、かゆみ、寒気などです。
血液中には、ナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウム、クロールなどの電解質が含まれており、心臓の動きや神経の伝達などに関わっています。ポートラーザの治療中に、血液中のマグネシウムの濃度が低下することがあるので注意が必要です。低マグネシウム血症の症状には、倦怠感、けいれん、食欲不振、脱力などがあります。
虚血性脳卒中・脳虚血・脳梗塞といった脳血管障害や心筋梗塞・狭心症などが分類される虚血性心疾患などの動脈血栓塞栓症、肺塞栓症・深部静脈塞栓症などの静脈血栓塞栓症が見られることがあります。そのような事態に備えて、十分に観察を行い、異常が認められた際には、薬剤投与を中止して適切な処置を行うことが大切です。
妊娠中もしくは妊娠している可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると考慮される場合にのみ投与することが可能です。ポートラーザを用いた生殖発生毒性試験は行われていないとされています。EGFRは、着床・胎盤の発生・胚胎児期における正常な器官形成などに重要であると報告されており、妊娠中の方に対してポートラーザを投与すると、胎児に対して有害な影響を及ぼしてしまうリスクがあるのです。
授乳中の方に関しては、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮して、授乳の継続または中止を検討しなければなりません。ポートラーザがヒト母乳中へ移行するというデータはありませんが、ヒトIgGは母乳中に移行すると言われています。
また、小児を対象とした臨床試験は行われていません。
術後補助化学療法においては、ポートラーザの有効性は確立されていません。術後補助化学療法とは、手術の後に身体の中に残っているがん細胞に対して薬を使用し死滅させることで、再発を抑える治療法です。
ポートラーザを投与中に、インフュージョンリアクション、皮膚障害、低マグネシウム血症などの副作用が起きた場合には、休薬、減量または中止を検討します。
ポートラーザを使用中に副作用が出ることがあるので、体調に変化があった時にはすぐに担当医に相談するようにしましょう。副作用によっては、使用を中止する必要があります。
ポートラーザの使用中に見られる可能性のある副作用には、以下のようなものが挙げられます。
今回挙げた症状以外でも、ポートラーザによる副作用の場合もあるので心配なことがあれば担当医に聞いてみるようにしてください。
ポートラーザの使用中に、重大な副作用が起こることがあります。適切に対処しないと命に関わる場合もあるので注意が必要です。ポートラーザを使用中に、体調に変化があった時にはすぐに担当医に相談するようにしてください。
ポートラーザで治療中に、ニキビのような皮疹や多形紅斑(たけいこうはん)などの重度の皮膚障害が起こることがあります。多形紅斑とは、皮膚にたくさんの赤い発疹やむくみが生じる病気です。多形紅斑がよく発生する場所は手足ですが、進行すると全身に広がり、発熱や関節痛、倦怠感などを伴うこともあります。重度の皮膚障害を認めた場合には、ポートラーザを中止します。
ポートラーザで治療中に、間質性肺炎が起こる場合があります。間質性肺炎の症状は、発熱、咳、呼吸困難などで、命に関わることもあるので注意が必要です。ポートラーザを使用中に間質性肺炎の発症を認めた場合には、すぐに使用を中止し、ステロイドの投与などを行います。
血栓塞栓症とは、血液中でできた血のかたまりが血管を閉塞し、臓器がうまく機能しなくなる病気です。血栓塞栓症には、脳梗塞や心筋梗塞、狭心症、肺塞栓症、深部静脈血栓症などが含まれます。血栓塞栓症は命に関わることのある副作用の1つです。
ポートラーザを使用すると、発熱性好中球減少症と呼ばれる副作用が見られる可能性があります。発熱性好中球減少症とは、何らかの理由で、好中球が500/μL未満に減少している、もしくは、現在1,000/μL未満でも48時間以内に500/μL未満になってしまうと予測される場合、体温が37.5度以上に発熱する状態のことを呼びます。
感染症を引き起こすと、症状が重症化したり、長引いたりしやすい傾向があることから、早急な対応が必要です。