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日本の食道がんの罹患率は、男性はゆるやかに増加しており、女性は横ばいだと言われています。性別でみると、男女比は約6:1となっており、男性に多く見られる病気の1つです。 食道がんは、初期段階のうちには自覚症状が見られないことが多く、がんが進行していくとさまざまな症状が現れるようになります。ここでは、食道がんの特徴や治療内容、特に抗がん剤治療について詳しく説明します。抗がん剤をやめたいと思っている方も、ぜひご覧ください。
※参照元:国立がん研究センター がん情報サービス https://ganjoho.jp/reg_stat/index.html
目次
食道がんはどこにでもできる可能性があると言われていますが、日本人の場合、約半数が食道の中央部、次いで下部に発生するケースが多いです。
食道がんは、内部を覆っている粘膜の表面にできる場合が多く、同時に何か所もできることもあります。
粘膜に生じてしまったがんが大きさを増していくと、外側へ広がり、気管や大動脈などの臓器へと浸潤していくのです。
やがて、食道の壁の内側にあるリンパや血管にがんが入り込んで、リンパ液や血液の流れに乗っていくことで、肺や肝臓など他の臓器に転移していきます。
食道がんの症状ですが、初期段階では自覚症状が見られないことが多いです。 内視鏡検査や上部消化管造影などの検査を人間ドックや検診などで行うことによって、早期発見できるケースも見られます。
がんがどんどん進行すると、飲食する時の胸の違和感や飲食物がつかえてしまう感じや体重減少が見られたり、胸部・背部の痛みや咳、声のかすれなどの症状があらわれたりするようになるのです。
食道がんのステージ(病期)は、3種類の分類(TNM分類)の組み合わせで決められます。
食道がんのT・N・M各因子の分類(日本食道学会による分類)
T因子 (がんの広がり) |
T1a | がんが粘膜内にとどまる |
T1b | がんが粘膜下層にとどまっている | |
T2 | がんが固有筋層にとどまる | |
T3 | がんが食道外膜にとどまっている | |
T4a | がんが食道周囲の組織まで広がっているが、切除できる (胸膜・心膜・横隔膜) |
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T4b | がんが食道周囲の組織まで広がっていて、切除できない (大動脈(大血管)・気管、気管支) |
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N因子 (リンパ節転移) |
N0 | リンパ節転移がない |
N1 | 第1群リンパ節のみ転移がある | |
N2 | 第2群リンパ節まで転移がある | |
N3 | 第3群リンパ節まで転移がある | |
N4 | 第4群リンパ節まで転移がある | |
N因子 (リンパ節転移) |
M0 | 遠隔転移がない |
M1 | 遠隔転移がある |
※参照元:国立がん研究センター がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/treatment.html
食道がんの治療は大きく分けると、内視鏡的切除、手術、放射線治療、薬物療法の4つあるのが特徴。それぞれの治療の長所を活かして、単独もしくは組み合わせて行うことになります。
治療法は主に病期によって決まってきますが、たとえ同じ病期であっても、身体の状態やがん以外の病気の有無、患者さんの希望などを考慮した上で決定されます。主治医としっかり相談して、十分に納得してから治療に入るのが望ましいです。
内視鏡治療の対象になるのは、リンパ節転移のない0期にあたる早期食道がんです。食道がんを含んでいて切り取られた組織を顕微鏡で詳しく調べ、がんが残っていたりリンパ節転移の可能性が高かったりするなどの判断がされた場合、手術や化学放射線療法などを行うことがあります。
手術は、食道がんに対する標準的な治療だと言われています。がん化している食道と胃の部分を切り取って、同時にリンパ節郭清を行います。食道を切り取ったあと、胃や腸を用いて食物の道をつくる「再建術」を実施するのです。がんが発生している部位によって手術方法が違ってくるので、術前の説明時にしっかりと確認しておくことが大切です。 食道がんにおける放射線療法は、がんを治すために行う治療(根治照射)と、がんによって起こる症状を抑える治療(緩和照射)の2種類があり、状態に合わせて行うことがあります。
また、がんの治療が妊娠・出産に影響する可能性もありますので、将来子どもを産むことを希望している場合には、妊孕性の温存が可能かどうかを担当医と相談してみてください。
前述した通り、食道がんの治療は、内視鏡的切除や手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)があります。
早期がんや切除できるもの対しては、内視鏡治療や手術を行います。切除が難しい場合は、化学療法や放射線治療を組み合わせて治療が行われることが多いです。
分子標的薬は大腸がんや乳がんなどに用いられるケースがあり、食道がんに対しても期待されている薬剤の1つです。現在海外では、食道がんに対するさまざまな薬剤の臨床試験が行なわれています。近い将来、新しい分子標的薬剤が用いられ、治療成績の向上が見られることが期待されていると言われています。
食道がんに使用される抗がん剤は、シスプラチンや5FU、ドセタキセルなどの種類があり、状況に合わせて投与されます。 上述した薬剤を用いると、吐き気や脱毛などの症状のほかに、正常な血液細胞が減ることによって出血しやすくなったり、感染しやすくなったりするなどの副作用が見られやすいのです。
上述した症状を抑える薬もありますが、強い副作用が見られた場合、治療薬の変更や中止ししなければならないケースもあります。 以上のことから、抗がん剤をやめたいと思われる要因のひとつに、副作用による影響などが考えられます。
※参照元:がんけん有明病院 https://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/esophagus.html
※参照元:ベルランド総合病院 https://www.seichokai.or.jp/bell/dept/page.php?ct=MQ==&sc=NTc=&no=NDY2
分子標的薬を併用できる治療の中で、特に相乗効果が期待されているのがANK免疫細胞療法と呼ばれる治療です。 分子標的薬そのものは、がん細胞を攻撃できるわけではなく、がん細胞の増殖に影響を与える分子(たんぱく質)をターゲットにするため、あくまでも補助的な薬剤です。 しかし分子標的薬を投与して、がん細胞が減少する患者さんもいます。このような高い効果が得られるかどうかは、NK細胞の活性度の高さが関連していると考えられます。
分子標的薬をANK免疫細胞療法と併用すると、分子標的薬ががん細胞の増殖を抑えてNK細胞ががん細胞を攻撃し、さらに分子標的薬のタイプによってはNK細胞の力を高める効果が期待できると言われているのです。
どんながんも治る魔法の薬はありません。
ゆえに、保険治療の抗がん剤だけでは緩和や延命が目的になることもありますが、ほかの治療と併用することで好転することもあります。できる治療すべてを試す覚悟が大事だということも覚えておきましょう。
治療のひとつの選択肢として挙げられるのが、ANK免疫細胞療法。がん退治の本命細胞である「NK細胞」を活性化させてがん治療を行っていく免疫療法のひとつです。
以下の動画で、ANK免疫細胞療法のしくみを詳しく紹介していますのでぜひご覧ください。
吐き気や嘔吐は、抗がん剤の投与後、数時間で起こる場合や翌日以降に起こる場合があります。症状は、すぐに落ち着く時もあれば、1週間程度続くこともあります。吐き気や嘔吐に対して薬が処方されている場合には、指示通りに内服することで予防できる可能性があります。
嘔吐や吐き気が長く続いて食事や水分を十分にとれないと、身体の中の水分が減り、脱水になるので注意が必要です。
脱水の症状は、めまい、喉の渇き、尿量の減少、ふらつきなどです。食事や水分が十分にとれないことが続く場合には医師や看護師に早めに相談した方がよいです。
吐き気や嘔吐で食事ができない状態が続く場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
抗がん剤が口の粘膜に作用し、口内炎ができることがあります。口内炎ができると、食べ物を食べるとしみたり、痛みを感じます。痛みがある場合には、炎症を抑えるうがい薬や痛み止めなどが処方されることがあります。
口内炎を予防するためには、口の中を清潔に保つことが大切です。柔らかい毛の歯ブラシを使い、丁寧に磨きしましょう。こまめなうがいは、口の中の乾燥を防ぎ、口内炎の予防につながります。
口の粘膜を刺激しないように、かたいものや熱いもの、香辛料、アルコールなどの刺激物は避けた方がよいです。
痛みがある場合には、我慢せず医療機関に相談しましょう。
抗がん剤の治療中に、血液を作り出す骨髄のはたらきが低下する骨髄抑制が起こることがあります。抗がん剤の治療開始後1~2週間に影響が強く出るといわれています。
骨髄抑制によって血液細胞である白血球や赤血球、血小板が減少すると、感染症や貧血、出血の原因になります。骨髄抑制によって白血球数が減っている時には、感染症を予防するために手洗い、うがい、マスク着用は大切です。
また、人の多い場所を避けたり、生ものは控えて火を通してから食べるようにした方がよいです。
感染の兆候にすぐに気づくために、1日1回は体温を測るのがおすすめです。37.5℃以上の発熱を認めたら、早めに医療機関に相談しましょう。
発熱だけでなく、咳や痰、皮膚の腫れ、尿の混濁、排尿時の痛み、下痢などの感染を疑う症状がある場合には、医療機関に相談しましょう。
抗がん剤が腸の粘膜を傷つけたり、腸の動きに影響を与えると、下痢が起こることがあります。下痢は、抗がん剤の投与直後に起こる場合もあれば、数日後に起こる場合もあります。
副作用で下痢の症状が出た時には、脱水症状を見逃さないことが大切です。脱水症状には、めまい、ふらつき、尿量減少、頭痛などがあります。下痢の症状がある時には、こまめな水分補給と消化のよい食事を心がけましょう。
下痢が3日以上続く、1日4~6回以上の下痢がある、脱水症状がある、などの時には、早めに医療機関に相談しましょう。
抗がん剤による影響で、疲れやすい、気力が出ないなどの症状が出ることがあります。倦怠感が出る時期は、抗がん剤治療後3日~2週間ぐらいが多いといわれています。ただし、抗がん剤治療は繰り返し行うことも多いため、倦怠感がずっと続く方もいます。
抗がん剤そのものによる影響だけでなく、他の副作用である吐き気や貧血などの要因が倦怠感を引き起こしている場合もあります。
倦怠感がある場合には、仕事や家事は無理のない範囲で行い、十分な休養をとるようにしましょう。散歩や体操などの軽い運動や30分以内の昼寝は、倦怠感の改善に効果があるといわれています。
倦怠感が続き、日常生活に支障が出る場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
抗がん剤を使用すると、髪の毛やまつげ、まゆげ、体毛などが抜けることがあります。
脱毛は抗がん剤治療後2~3週間で起こることがありますが、一時的なものといわれています。治療後しばらくすると再び毛が生え始め、約2年で元に戻ることが多いです。
脱毛中は、頭皮が敏感になっているので、頭皮に負担をかけないようにした方がよいです。例えば、刺激の少ないシャンプーやリンスを使う、ドライヤーは弱風・低温で使う、ブラシは毛の柔らかいものを使う、パーマやカラーを避ける、などを心がけるとよいといわれています。
頭皮を傷つけないように、爪を短く切っておくと安心です。脱毛による喪失感を軽減するために、帽子や医療用のかつら、ヘアアクセサリーなどをうまく利用するとよいかもしれません。
脱毛した部分に痛みを感じる場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
抗がん剤によって、腎機能が低下する腎障害が起こることがあります。腎障害の予防のために、抗がん剤の治療中にはたくさんの点滴を行います。たくさん点滴をすると、尿量が増えるため、何度もトイレに行く必要がありますが、我慢せずに行くようにしましょう。
腎障害の初期症状は何もないことが多いですが、進行すると尿量減少や体重増加、むくみ、倦怠感などの症状が出ます。
解熱鎮痛剤などのような市販薬の中には、腎障害を悪化させる可能性のあるものが含まれているので内服する場合には医師に相談するようにしましょう。
抗がん剤の治療中は、医療機関で点滴をたくさん行いますが、自分自身でもなるべく水分をとるようにするとよいです。目安としては、いつもの水分量に追加で1日500~1000mlくらいです。
尿量減少、体重増加などの症状を認めた場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
東京女子医科大学医学部卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。
妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。