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アービタックスは、結腸・直腸がん、頭頚部がんに使用される抗がん剤です。ここでは、アービタックスの作用や特徴、効果、副作用、注意点などについて説明します。ただし、他の治療薬と同じように、アービタックスの効果や副作用は個人によって異なることも理解しておいてください。
アービタックスは、大腸がん、頭頸部がんの治療に使用される分子標的薬です。頭頸部がんの治療薬に分子標的薬が認可されたのは、アービタックスがはじめてだと言われています。
アービタックスは、再発・転移性の頭頸部がんに関して、30年ぶりに全生存期間の延長が認められた治療薬です。アービタックスがプラスされたことにより、頭頸部がんの治療は、新しい時代を迎えることになったと言われています。
分子標的薬は、2000年代に登場したと言われている薬剤です。がん細胞の増殖や転移・浸潤に関係している分子のみを標的とし、がん細胞が持つ異常な分裂や増殖といった特定の活動を抑制することを目的に開発されました。
がん細胞が持つ特定の分子のみを狙い撃ちにして攻撃するため、正常な細胞へのダメージが比較的少なく済み、従来の抗がん剤と比べると身体へかかる負担も少ないとされています。しかし、現在では一般的な抗がん剤とは異なる肺炎や皮膚炎などの有害事象の存在が明らかになり、時として重症化するケースもあります。それぞれの薬剤によって特有の症状があるので、十分注意しながら治療を進めることが大切です。
アービタックスは、すでに大腸がんの治療において92カ国(日本も含まれる)で使用されている薬剤です。KRAS野生型切除不能進行再発大腸がんに関して、標準化学療法に対し生存期間延長が証明された分子標的薬として認可されています。
また、2012年12月からは頭頸部がんの治療にも使用されています。欧米では、以前より頭頸部がんの標準治療として取り入れられていましたが、日本も追いついた形になります。
アービタックスは、細胞の成長や増殖のシグナル伝達に関与するEGFRという上皮成長因子受容体を標的とする抗体薬です。がん細胞にあるEGFRに結びつくと、EGFRの活性を抑えられ、その部分から出ているがんの増殖シグナルを抑えると言われているのです。EGFRをもつがん細胞に対して、アービタックスは効果を発揮します。大腸がんや頭頸部がんの多くがEGFRを持っていると言われています。
アービタックスは、結腸・直腸がん、頭頚部がんなどに対して使用されます。アービタックスは、がん細胞の増殖に関わる分子に作用し、がん細胞が増えることを阻止します。
アービタックスは、治療切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん、頭頚部がんに対する効果を期待できます。
アービタックスの有効成分は、セツキシマブです。有効成分であるセツキシマブが、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)に働きかけ、がん細胞が増えないようにします。がん細胞の表面に存在するEGFRは、がん細胞の増殖に関わっています。
アービタックスの用法・用量は、投与間隔によって異なります。1週間間隔投与の場合には、初回は400㎎/㎡(体表面積)を2時間かけて、2回目以降は250㎎/㎡(体表面積)を1時間かけて1週間間隔で点滴静注します。2週間間隔投与の場合には、500㎎/㎡(体表面積)を2時間かけて2週間間隔で点滴静注します。患者さんの状態を考慮し、投与量は適宜調整されます。
手術でがんを完全に取り除くことが難しい場合や、再発した大腸がんでは、アービタックスによる薬物療法が検討されます。アービタックスは従来の抗がん剤と異なり、投与前に効果をある程度予測できる特徴があります。具体的には、がんの増殖に関わる「RAS」遺伝子を事前に検査し、アービタックスの効果が期待できるかどうかを判断します。
RAS遺伝子が「野生型」の場合、アービタックスの投与によりがんの進行を抑えたり、小さくする効果が期待できます。一方、RAS遺伝子が「変異型」の場合は、アービタックスの効果が期待できません。
アービタックスは単独で投与される場合と、他の抗がん剤と一緒に投与される場合があります。
アービタックスとFOLFOX療法(5-FU、レボホリナート、オキサリプラチン)を併用する場合、アービタックスは1週間に1回または2週間に1回投与し、FOLFOX療法は2週間に1回点滴で行います。オキサリプラチンを投与する前に、吐き気止めを使用してから治療を始めることもあります。
薬の投与後は、体を休めるために休薬期間を設けます。血液検査の結果や副作用の状況、全身の状態を確認しながら、可能であれば投与を繰り返して治療を進めていきます。
アービタックスとFOLFIRI療法(5-FU、レボホリナート、イリノテカン)を併用する場合、アービタックスは1週間に1回または2週間に1回投与し、FOLFIRI療法は2週間に1回点滴で行います。イリノテカンを投与する前に、吐き気止めを使用してから治療を始めることもあります。
薬の投与後は、体を休めるために休薬期間を設けます。血液検査の結果や副作用の状況、全身の状態を確認しながら、無理のない範囲で投与を繰り返し、治療を続けていきます。
アービタックスは、頭頸部がんの治療にも用いられます。頭頸部がんは早期には症状があまり現れず、進行してから見つかることが多いです。発見時に進行していて手術が難しい場合、アービタックスが治療の選択肢となることがあります。
頭頸部がんでアービタックスを使用する際は、放射線療法や他の抗がん剤と組み合わせて治療を行います。
アービタックスと放射線療法を併用する場合、アービタックスは1週間に1回点滴で投与し、放射線療法は2週目から開始します。
放射線療法は、1日1回、または午前と午後の1日2回を5日間連続で行います。最初は1日1回から始め、途中で1日2回に変更することもあります。一般的に、放射線療法は6~7週間続けて行われます。
アービタックスと組み合わせる代表的な抗がん剤として、シスプラチンとフルオロウラシルがあります。これらを併用する場合、アービタックスは1週間に1回点滴で投与し、シスプラチンとフルオロウラシルは3週間に1回点滴で行います。投与当日には、吐き気やアレルギーを防ぐための薬も使用します。
薬の投与後は、体を休めるために休薬期間を設けます。血液検査の結果や副作用の状況、全身の状態を確認しながら、無理のない範囲で投与を繰り返し、治療を進めていきます。
また、アービタックスとパクリタキセル、カルボプラチンを併用したり、カルボプラチンとフルオロウラシルを併用する場合もあります。アービタックスとパクリタキセル、カルボプラチンを併用する場合、アービタックスは1週間に1回投与し、パクリタキセルとカルボプラチンは1週間に1回の点滴を2週間連続で行い、その後1週間は休薬して体を休めます。
投与当日には、吐き気やアレルギーを防ぐための薬も使用します。血液検査の結果や副作用の状況、全身の状態を確認しながら、できるだけ体に負担をかけないように治療を続けていきます。
アービタックスを治療薬として使用する場合には、基本的な注意点がいくつかあります。
インフュージョンリアクションは、アービタックスのような分子標的薬の点滴時に見られる副作用のことです。なぜ起こるのかは明らかになっていないですが、がん細胞が薬の作用で急速に壊され、炎症やアレルギー反応を引き起こす物質が放出されるからではないかといわれています。インフュージョンリアクションの症状は、発熱、頭痛、発疹、かゆみ、寒気などです。
血液中には、ナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウム、クロールなどの電解質が含まれており、心臓の動きや神経の伝達などに関わっています。血液中の電解質の濃度は低すぎても高すぎてもよくありません。電解質異常が起こると、臓器の機能低下により命に関わる可能性があります。アービタックスの治療中に、血液中のマグネシウムやカリウム、カルシウムの濃度が低下することがあるので注意が必要です。
術後補助化学療法においては、アービタックスの有効性は確立されていません。術後補助化学療法とは、手術の後に身体の中に残っているがん細胞に対して薬を使用し死滅させることで、再発を抑える治療法です。
インフュージョンリアクションを防ぐために、ステロイドや抗ヒスタミン薬などを、アービタックスを使用する前に投与します。
過去にアービタックス注射液に含有されている成分で過敏症を経験したことがある人には使用できません。注射や薬品でアレルギー反応が見られたことがある場合は、医師や薬剤師に必ず相談しましょう。
アービタックスは、以下のような方にも注意が必要です。心配なことがある方は、治療前に医師や薬剤師へ相談しましょう。
低マグネシウム血症や低カリウム血症、低カルシウム血症、心不全といった心臓障害が現れるケースもあるため、アービタックスを使用する前に血液検査が行われます。
アービタックスを使用中に副作用が出ることがあるので、体調に変化があった時にはすぐに担当医に相談するようにしましょう。副作用によっては、使用を中止する必要があります。
アービタックスの使用中に見られる可能性のある副作用には、以下のようなものが挙げられます。
今回挙げた症状以外でも、アービタックスによる副作用の場合もあるので心配なことがあれば担当医に聞いてみるようにしてください。
アービタックスの使用中に、重大な副作用が起こることがあります。適切に対処しないと命に関わる場合もあるので注意が必要です。アービタックスを使用中に、体調に変化があった時にはすぐに担当医に相談するようにしてください。
ニキビのような皮疹や皮膚の乾燥、亀裂などの重度の皮膚症状が起こる場合があります。また、皮膚症状が出たところに炎症や感染が起こり、切開して膿(うみ)を出す処置が必要になることがあります。
副作用として間質性肺炎が起こると、命に関わる可能性があります。間質性肺炎の症状は、発熱、咳、呼吸困難などです。アービタックスを使用中に間質性肺炎の発症を認めた場合には、すぐに使用を中止し、ステロイドの投与などを行います。
重度の下痢の場合、身体の中の水分が失われることがあります。身体の中の水分が大量に失われ、腎臓が機能しなくなる腎不全に至ったという報告もあるので注意が必要です。重度の下痢に対しては、補液や下痢を止める薬の内服などで対処します。
深部静脈血栓症や肺塞栓症などの血栓塞栓症が起こることがあります。血栓塞栓症は命に関わることのある副作用の1つです。
アービタックスを使用すると、心不全が見られることもあります。息切れや息苦しさ、疲れやすい、むくみ、体重の増加などの症状が見られた場合、医師や薬剤師へ速やかに相談しましょう。
アービタックス使用中は、感染症にも注意しなければなりません。感染症にかかると、発熱や寒気、体のだるさなどの症状が見られます。肺炎は、発熱・咳・痰・息切れ・息苦しさなどの症状が見られることがあります。敗血症の場合、 発熱・寒気・脈が速くなる・だるさなどの症状が見られることがあるため、注意が必要です。