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前立腺がんは、他の部位のがんと比べると予後が比較的良好であると言われています。前立腺がんは、ほかのがんの中でも生存率が高く、ステージⅣにおける5年生存率は30%を超えているほどです。前立腺がんは、進行がゆっくりだという性質を備えていることから、がんが進行してしまっても、継続的に適切な治療を続けていくと余命を長く保てるケースもあると言われています。ここでは、前立腺がんにはどのような特徴があるのかまとめるとともに、抗がん剤など治療内容について詳しく説明します。抗がん剤をやめてしまおうか迷っている方も、ぜひ参考にしてください。
※参照元:国立がん研究センター がん情報サービス https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
目次
前立腺は男性だけにあって膀胱の下あたりに位置し、尿道周囲を囲むようについている臓器のことを言います。形は栗の実に似ており、前立腺では精液の一部に含まれている前立腺液を作っているのが特徴。前立腺液には、「PSA」と呼ばれるタンパク質が含有され、そのほとんどは、前立腺から精液に分泌されると言われており、ほんの一部が血液中に取り込まれていきます。
前立腺がんは、前立腺内の細胞が正常な細胞増殖機能を失ってしまい、秩序を持たずに自己増殖することで生じるがんです。がんの進行は比較的ゆっくりであるのが特徴であり、早期に見つけることによって、治癒する可能性が高まります。
前立腺がんのステージ(病期)は、TNM分類と呼ばれるものが用いられています。病期は、身体的な所見や画像による診断などからTNM分類にそって診断されます。
下記の表では、病期分類についてまとめましたので、チェックしてみてください。
前立腺がんの病期分類
T1 | 直腸診で明らかにならず、偶然発見されたがん |
T1a | 前立腺肥大症などの手術で切り取った組織の5%以下に発見されたがん |
T1b | 前立腺肥大症などの手術で切り取った組織の5%を超えて発見されたがん |
T1c | PSAの上昇などのため、針生検によって発見されたがん |
T2 | 直腸診で異常が見られ、前立腺にとどまるがん |
T2a | 左右どちらかの1/2までにとどまるがん |
T2b | 左右どちらかだけ1/2を超えるがん |
T2c | 左右の両方に及ぶがん |
T3 | 前立腺を覆う膜(被膜)を超えて広がったがん |
T3a | 被膜の外に広がったがん(片方または左右両方、顕微鏡的な膀胱への浸潤) |
T3b | 精のうまで及んだがん |
T4 | 前立腺に隣接する組織(膀胱、直腸、骨盤壁など)に及んだがん |
N0 | 所属リンパ節への転移はない |
N1 | 所属リンパ節への転移がある |
M0 | 遠隔転移はない |
M1 | 遠隔転移がある |
※参照元:国立がん研究センター がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/treatment.html
他の部位へ転移が見られない前立腺がんは、低リスク群か中間リスク群、高リスク群に分けられます。
リスク分類は、転移がみられず完治を目指す治療が可能な状態を対象としています。手術や放射線などで根治治療を実施した後に再発する可能性が低いものについてが低リスク、再発しやすいものを高リスクと呼んでいるのが特徴です。
初期の前立腺がんの場合には、自覚症状がほとんどありません。がんが進行すると、尿が出にくい、トイレに行った後も尿が残っている感覚がある、尿を出した時に痛い、尿や精液に血液が混じるなどの症状が出ます。さらに、がんが前立腺以外の場所へ転移すると背中や腰の痛み、足のしびれ、足や下腹部のむくみなどを自覚することがあります。
※参照元:国立がん研究センター がん情報サービス/前立腺がんについて
(https://ganjoho.jp/public/cancer/prostate/about.html)
前立腺がんの検査方法には血液検査、直腸指診、超音波検査、MRI検査などがあります。
血液検査では、血液中のPSAという物質を測定します。PSAは、前立腺特異抗原(prostate specific antigen)の英語の頭文字からとった略語で、前立腺で産生されるタンパク質です。身体の中にがんが発生すると、それぞれのがんに特有の物質が血液や尿の中に出るようになります。
PSAは、前立腺がんの時に血液中で高くなる可能性のある物質です。PSAの数値が高いと、超音波検査やMRI検査などの精密検査を勧められます。ただし、PSAは前立腺炎や前立腺肥大症でも高くなる場合があります。
直腸指診は、医師が肛門から指を挿入して前立腺の状態を確認する検査で、前立腺の大きさや表面の状態、硬さ、痛みの有無などを調べます。
超音波検査では、前立腺の形や大きさなどを調べます。前立腺がんがあると、超音波検査で黒い影が映ることがあります。MRI検査では、前立腺の中に異常な病変がないか調べます。
血液検査や直腸指診、超音波検査などで前立腺がんが疑われた場合には、確定診断のために前立腺生検をします。前立腺生検とは、前立腺に細い針を刺して組織を採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を調べる検査です。
※参照元:国立がん研究センター がん情報サービス/前立腺がん 検査
(https://ganjoho.jp/public/cancer/prostate/diagnosis.html)
前立腺がんの主な治療は、監視療法や手術などのほかに放射線治療、ホルモン療法、化学療法があり、複数の治療法から選べる場合があるのです。PSAデータやリスク分類、年齢、がんがどのくらい悪性なのか考慮して検討していきます。
前立腺がんなどの泌尿器がんの場合、抗がん剤や分子標的薬、ホルモン剤、免疫療法薬など多彩な薬剤があり、患者さんの状態や希望に合わせて使用します。
その他には、期待余命と言って、今後どのくらい生きられるかという見通しや患者さんの治療に対する考えなども含めて治療法の決定がされるのです。
主治医より、治療やがんの状態などについてしっかりと説明を受けて、十分納得してから治療に入るのが望ましいです。
前立腺がんが見つかっても、あえて治療をせずに経過を見る方法を監視療法とよびます。
前立腺がんのなかには、早期に見つかり、症状もなく経過し、死亡の原因にもならないがんが存在することがわかっています。そのような前立腺がんに対して過剰な治療を行うと、治療に伴う合併症などで生活の質が低下してしまう可能性もあるので、監視療法を選択します。
監視療法で経過を見る時には、定期的にPSA検査と前立腺生検を行い、もし病状が悪くなったら積極的な治療を始めます。監視療法に適しているのは、高齢の方や早期で限局性の前立腺がんの方などです。
前立腺がんに対する手術では、基本的に前立腺を精嚢(せいのう)や精管などの周囲の臓器も含めて、全て摘出します。
他の多くのがんの場合には、がんのある部分だけ切除する部分切除を行うことがありますが、前立腺がんの場合には基本的に全て前立腺全摘除術になります。前立腺がんが、前立腺内に多発することが多く、もし全摘出しないと小さいがんを取り残してしまう可能性があるからです。また、前立腺を全て摘出してしまっても生命に影響しないというのも全摘出を行う理由の1つです。
手術の方法には、開腹手術や腹腔鏡下手術があります。手術ロボットを使用しながら行うロボット支援腹腔鏡下手術も保険適応になっています。開腹手術よりも腹腔鏡下施術の方が、傷が小さく、手術後の回復も早いですが、手術中の視野が狭く、高度な技術が必要なので限られた施設でしか行えません。
前立腺がんに対する放射線治療では、前立腺に放射線を照射し、がん細胞を死滅させます。がんが、前立腺内にとどまっている場合に放射線治療の適応になります。手術療法に比べて放射線治療は身体の負担が少ないため、手術が難しい高齢の患者さんにも行うことができます。
放射線治療は、がんを死滅させるだけでなく、転移したがんによる痛みを軽減する目的で行われる場合もあります。放射線治療の方法には、外部照射療法と組織内照射療法があります。外部照射療法では、身体の外から放射線を照射し、組織内照射療法では前立腺の中に放射線源を挿入します。
前立腺がんは、精巣や副腎(ふくじん)から分泌される男性ホルモンの刺激で病気が進行するという特徴があります。ホルモン療法は内分泌療法ともよばれ、男性ホルモンの分泌やはたらきを抑制する薬で前立腺がんの進行を抑える治療法です。
手術や放射線治療を行うことが難しい場合や放射線治療の前後、前立腺がんが他の臓器に転移した場合にホルモン療法を行います。ホルモン療法は、長く続けていると反応が弱くなり、病状がぶり返すことが問題となります。有効な治療法ではあるものの、ホルモン療法のみで前立腺がんを完治させることは難しいと考えられています。
化学療法とは、抗がん剤を使用してがんの進行を抑える治療法です。化学療法は、ホルモン療法が有効でない場合、ホルモン療法の効果が見られなくなった場合に行われることが多いです。前立腺がんには、タキサン系とよばれる抗がん剤が有効とされています。
抗がん剤を使用すると、全身倦怠感や食欲低下、脱毛、手足のしびれなどの副作用が見られることがありますが、投与量を調整すると副作用の症状が改善する場合があります。化学療法は、外来で行うことのできる治療法です。
抗がん剤は、点滴や内服などの手段で投与されることが多く、がん細胞を縮小または消滅させる目的で実施されます。転移があってホルモン療法の効果が得にくくなってしまったがんに対して実施されると言われているのです。
前立腺がんの場合、ドセタキセル水和物やカバジタキセルなどの薬剤を用いられているのが特徴。
これらの薬剤を用いると、貧血や脱毛、だるさなどのほかに食欲低下など、さまざまな副作用に悩まされる可能性があります。抗がん剤をやめてしまおうかと悩む要因の1つとして、抗がん剤による副作用が影響していると考えられます。
分子標的薬と相性が良いと言われているのがANK免疫細胞療法です。分子標的薬は、がん細胞に対して直接攻撃するのではなく、たんぱく質をターゲットにしてがん細胞を間接的に攻撃する補助的な薬剤です。
しかし、分子標的薬の単独投与を行うことによってよい影響をもたらす場合があり、それにはNK細胞の活性度が大きく関与していると考えられます。つまり、分子標的薬を併用できる治療法として、ANK免疫細胞療法は向いていると考えられるのです。
分子標的薬ががん細胞の増殖を抑え、ANK免疫細胞療法でがん細胞の退治を目指すという、相乗効果が期待できるのです。
どんながんも治る魔法の薬はありません。
ゆえに、保険治療の抗がん剤だけでは緩和や延命が目的になることもありますが、ほかの治療と併用することで好転することもあります。できる治療すべてを試す覚悟が大事だということも覚えておきましょう。
治療のひとつの選択肢として挙げられるのが、ANK免疫細胞療法。がん退治の本命細胞である「NK細胞」を活性化させてがん治療を行っていく免疫療法のひとつです。
以下の動画で、ANK免疫細胞療法のしくみを詳しく紹介していますのでぜひご覧ください。
抗がん剤は、血液細胞を作る骨髄とよばれる組織の働きを抑制する副作用を起こします。骨髄は赤血球や白血球、血小板を作っているので、骨髄の働きが抑制されると貧血や感染症などを引き起こします。抗がん剤を使用中に感染症を発症すると、重症化する可能性も高く、命に関わるので注意が必要です。
食事の前や外出の後などに、手洗い、うがいをすることによって感染症を予防できます。また、感染のリスクを下げるために、人ごみの多い場所を避けたり、外出時にマスクをするようにしましょう。1日1回は体温を測ると、感染の兆候に早めに気づいて対処できるのでおすすめです。
37.5℃以上の発熱を認めたら、早めに医療機関に相談しましょう。
前立腺がんに対して使用される抗がん剤によって、吐き気や嘔吐が起こることがあります。吐き気や嘔吐の症状は、抗がん剤を投与してから数時間で出ることもあれば、翌日以降に起こる場合もあります。症状は、すぐに落ち着く時もあれば、1週間程度続くこともあります。
食べる量が多かったり、食べ物の香りが強いと吐き気や嘔吐の原因になる場合があるので、口当たりがよく、食べやすいものを少量ずつ食べるとよいかもしれません。吐き気止めを処方されている場合には、医師の指示通りに内服すると効果を期待できます。
吐き気や嘔吐で食事ができない状態が続く場合や激しい嘔吐が続く場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
抗がん剤の投与直後や数日後に、下痢の症状が出ることがあります。下痢が続くと、脱水になる場合があるので注意が必要です。脱水による症状には、尿量減少、口腔内の乾燥、脱力、頭痛、めまいなどがあります。こまめに水分補給をして、温かくて消化の良い食事を食べるようにしましょう。
下痢が3日以上続く、1日4~6回以上の下痢がある、脱水症状がある、などのような場合には、すぐに医療機関に相談しましょう。
抗がん剤による副作用で、吐き気や嘔吐、下痢などが起こり、食欲不振になることがあります。食欲不振の時には、調子のよい時に食べたいものを食べるようにしましょう。口当たりのよいものや食べやすい味付けの食べ物を探してみるとよいかもしれません。
食べる量を少なめにしたり、数回に分けて食べるなどの工夫も効果的なことがあります。食べたいものがみつからない場合や食欲不振が続いている場合には、栄養補助食品の利用を検討するのも1つの方法です。栄養補助食品を選ぶ時には、医師や看護師、栄養士などに相談してみましょう。
食欲不振が続いている場合や体重が減っている場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
抗がん剤を使用すると、髪の毛やまつげ、まゆげ、体毛などが抜けることがあります。脱毛は抗がん剤治療後2~3週間で起こる場合があります。脱毛が起きても、治療後しばらくすると再び毛が生え始め、約2年で元に戻ることが多いです。
脱毛の予防法は確立していないですが、頭皮の清潔を保ち、負担の軽減を心がけるとよいといわれています。脱毛による喪失感を軽減するために、帽子や医療用のかつら、ヘアアクセサリーなどを利用するのもよい方法です。
脱毛した部分に痛みを感じる場合には、早めに医療機関に相談しましょう。