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前立腺がん治療と性機能障害

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前立腺がんの治療を行うと、ほとんどの場合に性機能障害が起こります。ただし、治療方法によって性機能障害の程度が違い、治療により改善する場合もあります。

今回は、前立腺がん治療で起こる性機能障害と治療法についてわかりやすく説明します。

そもそも性機能障害とは?

性機能は、勃起機能と射精機能に大きく分けられます。前立腺がんの治療を行うと、性機能に影響が出ることが多いです。

前立腺がんの治療には、手術や放射線治療、ホルモン療法、抗がん剤治療などがありますが、どの治療法でも性機能障害が起こる可能性があります。具体的な性機能障害の症状には、性欲がなくなる、勃起しづらい、射精ができない、などが含まれます。

手術と性機能障害

前立腺がんの手術では、通常は前立腺を全て取り除きます。手術によって、前立腺と共に前立腺の外側に走っている勃起神経も摘出してしまうと、勃起機能に影響が出ます。

勃起神経は、前立腺の右側と左側の両側に走っています。勃起神経を片方だけ摘出する場合と、両方を摘出する場合では勃起機能への影響が異なります。

前立腺がんが広い範囲に広がっていて、左右両方の勃起神経も前立腺と共に摘出しないといけない場合には、完全に勃起機能が失われます。もし、勃起神経を片方でも残すことができれば勃起機能はある程度残ると考えられています。手術後の合併症である勃起障害は、男性の生活の質の低下にもつながるため、勃起神経を温存できるかどうか手術前に慎重に検討します。

ただし、勃起神経を残したとしても、年齢やもともとの勃起機能、糖尿病などの併存疾患の影響もあるため、手術後に勃起機能が保たれるかどうかは個人差があります。

また、前立腺がんに対する治療で、前立腺と共に精嚢(せいのう)を取ると、性機能の1つである射精機能が低下する可能性もあります。

放射線治療と性機能障害

放射線治療では、勃起神経や勃起に関連する血管に放射線が当たるので、勃起機能の低下が起こる可能性があります。手術に比べると、放射線治療の方が勃起機能の低下はゆっくりですが、徐々に低くなるといわれています。

射精障害に関しては、放射線治療後に量が減ったり、ほとんど出なくなることが多いです。

ホルモン療法と性機能障害

前立腺がんは男性ホルモンの影響を受けるので、男性ホルモンの作用を抑えられれば、がん細胞の増殖も抑制できると考えられています。

前立腺がんに対するホルモン療法は、アンドロゲン遮断療法とよばれ、男性ホルモンであるアンドロゲンの分泌やはたらきを抑える治療法です。ただし、アンドロゲンには勃起を強くするはたらきもあるので、ホルモン療法後には勃起機能の低下が起こる可能性が高いです。

ホルモン療法を中止あるいは終了した後には、男性ホルモンの数値は徐々に回復するといわれています。勃起機能の回復時期は、投与量や種類によって異なります。

抗がん剤治療と性機能障害

前立腺がんに対する治療で使用される抗がん剤のなかには、勃起機能に影響を与えるものがあります。

例えば、シスプラチンやビンクリスチンなどの抗がん剤は、勃起に関わる神経や血管に影響するので、勃起機能の低下を引き起こす可能性があります。また、ビンブラスチンおよびブレオマイシン治療と組み合わせたシスプラチンの投与は、神経や血管に影響し、勃起機能の低下に関連しているのではないかと考えられています。

心因性による性機能障害

治療による身体への影響だけでなく、心理的なことが原因で勃起機能や射精機能の低下が起こる場合があります。

がんに対する恐怖や治療に対する不安などで悩み、うつ状態になる方もいます。うつ状態になると、性欲や射精機能の低下が起こるといわれています。心理的な問題が解決すると、徐々に性機能障害が改善する場合があります。

勃起障害(ED)の治療法

薬物療法

勃起障害に対する治療法の1つとして薬物療法があります。手術や放射線治療を行ったとしても、勃起神経が残っていればPDE(ホスホジエステラーゼ)5阻害剤とよばれる薬の効果を期待できます。PDE5阻害剤には、身体の中のホスホジエステラーゼタイプ5という酵素を阻害し血管を広げる作用があるので、勃起力のサポートや維持に役立ちます。

日本では、前立腺がん治療後の勃起障害に対してシルデナフィル(バイアグラ)、バルデナフィル(レビドラ)、タダラフィル(シアリス)とよばれるPDE5阻害剤が使用されます。副作用には頭痛、ほてりがあり、ニトログリセリンのような血管を広げる作用のある薬を服用している場合には、PDE5阻害剤は使用できません。

また、インターネットなどで偽の薬も出回っているので、必ず担当医に相談しましょう。

そのほかカウンセリングなど

勃起障害に対する治療法には、薬物療法以外にも精神療法や陰圧式勃起補助具などがあります。

勃起障害が起こると、多くの男性は気持ちが落ち込みます。話しづらいこともあると思いますが、1人で悩まずに医師や看護師などに相談しましょう。カウンセリングや精神療法を受けると、心理的な問題による勃起障害は改善することもあります。

また、勃起状態を起こすための器具である陰圧式勃起補助具を使って勃起障害を改善する方法もあります。

前立腺がん治療と性機能障害に関するまとめ

前立腺がんの治療による身体への影響や心理的な要因によって、勃起機能や射精機能に障害が起こることがあります。性機能障害に関することは、聞きづらい場合もあるかもしれませんが、1人で悩まずに医師や看護師などに相談するようにしましょう。

医師や看護師に聞きづらい場合には、がん相談支援センターのがん専門相談員に相談することもできます。同じ悩みをもつ患者さんの話を聞ける患者会や患者サロンなどに参加してみるのもよいかもしれません。

相談したり、話したりすると、気持ちが落ち着き、解決の糸口が見つかる可能性もあります。

如月 真紀

<この記事を書いたのは・・・>

如月 真紀(きさらぎ まき)

医師、医学博士、総合内科専門医。都内の大学病院勤務を経て、現在はアメリカで研究中。医療関連の記事の執筆や監修、医療系動画監修、医療系コンテンツ制作など幅広く手がけている。研究の傍ら、医学の知識や医師の経験を活かし、患者や患者家族のためになるコンテンツ作成を目指している。

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