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免疫細胞療法の切り札的存在として、注目と期待が集まっているANK免疫細胞療法。そもそもどんな治療なのか、そして効果や副作用はどうなのか、もっとも気になるポイントをここで説明していきます。
目次
リンパ球バンクは、ANK免疫細胞療法を開発したドクターと治療を受けた患者さんが中心となって創業され、科学的根拠に基づく治療システムの開発を手がけてきました。
ANK免疫療法の基本情報はリンパ球バンク株式会社をスポンサーとして、Zenkenがコンテンツを作成・運営しています。
ANK免疫細胞療法は「活性化自己リンパ球移入法」などと呼ばれる、がんに対する免疫療法の一種です。ANK（Amplified Natural Killer）の名前が示すとおり、増殖活性化させたNK細胞の力を利用した治療法で、臓器の固形がんをはじめ肉腫やATL（成人T細胞白血病）を含む白血病、悪性リンパ腫など、ほとんどすべてのがんが治療対象になります。
これまで、活性の高いNK細胞が攻撃できないがん細胞の事例はありません。人体から採取されたNK細胞を活性化させると、他の免疫細胞とは比較できないほどの攻撃力を持つようになり、がん細胞をスピーディーに退治します。
進行がんに対して行われる標準治療は、手術や抗がん剤治療、放射線治療などを組み合わせることで根治やがんの広がりを押さえる、がんの症状を和らげる、延命するといった効果を目的としています。ANK免疫細胞療法も同様に、自身の免疫の力を利用してがん細胞を攻撃、がん細胞の転移、増殖を抑え、再発防止をめざしています。
最近では、ANK免疫細胞療法の著効例報告論文が世界5大医学雑誌の一角を占めるBritish Medical Journal（BMJ）に掲載されています。
※参照元：British Medical Journal（BMJ）「Effectiveness of Amplified Natural Killer (ANK) Therapy for Adult
T-cell Leukemia/Lymphoma (ATL) and Future Prospects of ANK
Therapy」[pdf]
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8986168/pdf/nihms-1788239.pdf
ANK免疫細胞療法は、まず培養するリンパ球を患者さんの体内から採取するところから始まります。それには人工透析のような専用装置を使用し、患者さんの血液を体外に循環させます。その大部分は体内にそのまま戻しつつ、同時に血液中のリンパ球を分離して集めていきます。採取したリンパ球は京都の培養センターに即日持ち込まれ、リンパ球に含まれているNK細胞を活性化させると同時に選択的にNK細胞だけを増殖させます。
それを点滴で患者さんの体内に戻すというのがこの治療法の大まかな流れです。
活性化されたNK細胞は、患者さんの体内に戻るとがん細胞を直接攻撃します。それと同時に大量のサイトカイン（免疫刺激物質）を放出し、がん細胞によって抑制されていた体内のNK細胞をも活性化させます。また、培養されたNK細胞が放出するサイトカインはT細胞をはじめとした他の免疫細胞も活性化させ、特にT細胞の一種であるCTLからがん細胞を攻撃するタイプの細胞が増殖してくることも期待できます。
ANK免疫細胞療法の効果における最大の特徴ともいえるのは、基本的に治療するがんの部位を問わないということです。
もともとNK細胞は、全身をすみずみまで巡回している細胞だからです。点滴で体内に戻すと血液の流れに乗って全身をめぐり、がんの近くの血管から抜け出して攻撃に移ります。現在知られている限り、どんながん細胞でも攻撃し、なおかつ正常な細胞を傷つけない細胞はNK細胞しかありません。ただし、あくまでも「活性度の高い」NK細胞に限った話です。活性度の低いNK細胞はがん細胞を攻撃できません。
脳には脳血液関門と呼ばれるゲートの存在が知られており、多くの薬剤や他の免疫細胞と同じく、NK細胞もこのゲートを通り抜けにくいとされます。ANK免疫細胞療法に併せてサイバーナイフやガンマナイフといった高度な放射線治療を受けることで効果が得られた事例があるようです。
ANK免疫細胞療法は生活の質を改善させる効果も期待できます。もちろん生活の質は患者さん一人ひとりによって状況がまったく異なりますが、ANK免疫細胞療法を受けると食欲や睡眠状態が改善された、肌のつやがよくなった、といった事例もあるようです。
また、抗がん剤の休薬期間にANK免疫細胞療法を受けることで、抗がん剤の副作用が軽減されるという印象を持っている医師もいます。あまりに抗がん剤の副作用が強いと治療を中止しなければならないケースがありますが、ANK免疫細胞療法にはそうした状況を回避できる効果も見込めるかもしれません。
ANK免疫細胞療法は治療の強度が非常に高いため、他の免疫細胞療法では見られないような明確な副作用（免疫副反応）が生じます。具体的には、点滴を行なうごとに発熱などがみられます。これは、体内に戻った活性度の高いNK細胞が大量の免疫刺激物質を放出するせいで、それだけ免疫刺激作用が高いことの表れともいえます。
実際に、ANK免疫細胞療法以外の免疫療法では、若干の微熱がある程度で免疫刺激作用はみられません。
特に相当量の化学療法を受けて免疫力が極端に低下している患者さんの場合、初回や2回目の点滴の際に高熱を生じることがあります。それ以降は落ち着いてくることが多いのですが、医師の判断によって体内に戻す細胞の数を減らすこともあります。
いずれにしても、こうした副作用は一過性のもので、患者さん本人の細胞を再び戻す治療なので原理的には安全性が高いと考えられます。むしろ、ANK免疫細胞療法を受けているうちに抗がん剤の副作用が軽減され、体調が回復していく傾向がみられるケースもあります。
東京女子医科大学医学部卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。
妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。