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以前の日本では、がん患者に関する報告は任意だったため、データは存在していたものの必ずしも実態を把握できるものではありませんでした。しかし、2016年に「がん登録推進法」が施行され、がん患者に関する報告は各医療機関の義務となりました。現在は、全国各地のがんの罹患率や地域ごとの特性などが比較検討できるようになりました。今回は、がんの罹患率の地域差を見ることで推定される、がんのリスクを下げる要因にについてわかりやすく説明します。
厚生労働省が発表した「平成30年全国がん登録罹患数・率報告」によると、全部位におけるがんの粗罹患率の高い都道府県は、1位から秋田県、青森県、長崎県、島根県、和歌山県となっています。粗罹患率とは、人口10万人当たりの年間がん罹患数のことです。全国の粗罹患率が、869.3人に対して、秋田県は1105.6人、青森県は1049.7人、長崎県は1046.6人、島根県は1043.2人、和歌山県は1008.7人となっています。数字を見ると、秋田県では特に高いがんの罹患率であることや、島根県と和歌山県との差は、2位から4位までの差より大きいことがわかります。
がんの罹患率を高めている理由について、医学的に明確に決定づけられているものはありません。ただし、今までの多くの研究結果から、がんのリスクを高めるのではないかと推測される要因はいくつか明らかになっています。例えば、喫煙やアルコール、塩分の過剰摂取、肥満、運動不足などは、がんのリスクを高める要因として知られています。
今までの研究結果をふまえて、日本のがんの罹患率の高さを考察すると、秋田県におけるがんの罹患率の高さの理由の1つとして、塩分の過剰摂取が挙げられます。秋田県では、日常的に漬物や塩鮭のような塩分の多く含まれている食品を摂取していることが知られています。また、秋田や青森のような、雪の多い地域では、冬場に雪のために外出しづらくなり、運動不足の原因になると考えられています。 ただし、秋田県、青森県に続く長崎県は、東北よりも暖かい地域ですが、がんの罹患率が高くなっています。このように、運動不足などのような一面的な理由でがんの発症が高くなっていると決めつけられないこともわかります。
全国のがんの罹患率のデータを見る時に、全部位のがんに関して、性別や年齢を問わないという条件で算出されている罹患率である点を認識しておくことが大切です。
例えば、男性のがんである前立腺がんに関しては、香川県や鹿児島県の罹患率が高くなります。また、がんの罹患率が高い地域に住んでいるからといって、自分もがんになってしまうのではないかと不安になる必要はありません。データはあくまでも統計上のものなので、数字は参考程度に考え、がんの発症リスクを下げるような健康的な生活を送るように心がけることが大切です。
がんの罹患率が低い地域は、1位は沖縄県で、愛知県、東京都、埼玉県、神奈川県となっています。数字で見ると、沖縄県の粗罹患率は653人となっており、全国の869.3人に対して明らかにがんの罹患率が低いことがわかります。がんの罹患率が低い沖縄は、日本の中でも長寿県として知られており、沖縄での健康法や長寿に関する情報は話題になることも多いです。
また、愛知県や東京都の粗罹患率は低いですが、分母となる人口の数が多いので比率が下がる可能性も考えられます。
がんの罹患率が高い地域のデータを考察する時と同様に、がんの罹患率が低い地域のデータを見る時も、1つの理由や地域特性だけでがんのリスクを低くできると言い切ることはできません。一方で、明らかにがんの罹患率の低い沖縄県のような地域については、長寿や健康に良い影響を与え、がんの罹患率を抑える秘訣があるのではないかと予想できます。
全国のがんの罹患率のデータを考察することで、がんリスクを下げる要因についての可能性を推測できます。例えば、沖縄に関しては、日本でありながら食文化が本州と異なるため、伝統的な食事や生活習慣ががんリスクを下げているのではないかと考えられます。具体的には、沖縄県民の食生活には、がん予防に効果的な栄養素が豊富とされている野菜や海藻、豆腐、紅芋、ゴーヤーなどが多く含まれることが知られています。また、適度な運動、日照時間の長さなどもがんリスクを下げる要因ではないかと考えられています。
また、労働人口の多い都市部では、企業の福利厚生に対する意識が高く、健康診断や定期健診を受けることを推奨している場合も多いです。企業や個人による健康管理が積極的に行われているので、がんの罹患率が低くなる可能性もあります。
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