このサイトは「リンパ球バンク株式会社」をスポンサーとして、Zenken株式会社が運営しています。
食生活の変化などにより、日本人の発症率が高くなっている大腸がん。早期の場合は自覚症状に乏しく、痔と勘違いされるなど進行してから発見されることも少なくありません。ここでは大腸がんの特徴や治療内容、特に抗がん剤治療について詳しく説明します。
抗がん剤をやめたいと思っている方もぜひご覧ください。
目次
早期の大腸がんは自覚症状に乏しく、症状がでるのはがんが進行してからというケースが少なくありません。主な症状は血便や下血、下痢と便秘を繰り返す、便が細い、腹部の膨満感、貧血、体重減少などです。中でも多い血便や下血は痔などでもみられるので、放置されることも多いようです。大腸がんがさらに進行すると腸閉塞をきたし、便が出なくなって腹痛や嘔吐などの症状が出現します。大腸がんの転移で肺や肝臓の腫瘍が先に見つかることもあります。
大腸がんのステージ(病期)は、がんの深達度やリンパ節転移・遠隔転移の有無によって決められます。
早期の大腸がんであれば、内視鏡による切除が可能です。しかし、がんが大きく内視鏡治療での切除が困難な場合は開腹手術を行ないます。その場合、目に見えるがん病変だけではなく、がんが広がっている可能性のある腸管やリンパ節も合わせて切除します。がんを切除した後は残った腸管をつなぎ合わせますが、それができない場合は人工肛門を造設することになります。
大腸がんに対する放射線治療では、直腸がんの骨盤内再発予防や人工肛門回避などの目的で行なわれる補助放射線治療や、がんの再発転移による症状を和らげるための緩和放射線治療があります。
また、がんの治療が妊娠・出産に影響する可能性もありますので、将来子どもを産むことを希望している場合には、妊孕性の温存が可能かどうかを担当医と相談してみてください。
早期の大腸がんの場合には、内視鏡治療を行うことができます。内視鏡とは、細長い管の形をした器具で、小型カメラとライトがついています。大腸がんの内視鏡治療では、内視鏡を肛門から入れて、大腸の内部をモニター画面に映し出しながら、がんを切除します。
内視鏡治療では通常の手術のようにおなかを切らないため、身体への負担が比較的軽く、入院期間も短いというメリットがあります。一方で、内視鏡治療でがんを切除した部分に穴が開いたり、出血したりする場合もあります。内視鏡治療でがんが取り切れなかった場合には、追加で手術が必要です。
内視鏡治療だけで大腸がんを切除できない場合に手術を行います。がんだけでなく、がんが広がっている可能性のある腸管やリンパ節も手術によって切除します。もし、がんが周囲の臓器に広がっていて、切除しても問題がなさそうであれば一緒に取り除きます。
がんを切除した後に腸管をつなぎ合わせられない場合には、肛門のかわりとなる便の出口をおなかに作る必要があります。手術の方法は、がんのある場所や進行状況、全身状態などを考慮して決定されます。
結腸がんの手術では、がんのある部分とがんが広がっている可能性のある腸管、周囲のリンパ節を切除します。切除した後は、残った腸管同士をつなぎます。切除する腸管の範囲によって、回盲部切除術、結腸右半切除術、横行結腸切除術、結腸左半切除術などとよばれます。
結腸がんの場合には、手術で腸を切除した後も特別な後遺症がほとんどないといわれています。手術後にも、残った大腸の働きによって、栄養の消化や吸収に影響が出ないからです。
直腸は骨盤の中の深く狭い場所にあり、出口は肛門につながっています。直腸の周囲には前立腺や膀胱、子宮、卵巣があります。
直腸がんの手術方法には、直腸局所切除術、前方切除術、直腸切断術、括約筋間直腸切除術があり、直腸がんの場所やがんの進行状況を考慮し、選択します。
がんのある場所によっては肛門を残すことができないので、肛門のかわりとなる便の出口をおなかに作ります。また、手術後の機能障害をなるべく少なくするために、可能であれば、直腸の周囲にある自律神経を残す手術をします。自律神経は、排尿機能や性機能を調整する神経です。
大腸がんに対する薬物療法には、大きく分けて2つあります。手術後の再発を予防する目的で行う補助化学療法と、手術によるがんの切除が難しい状態で、症状を緩和する目的で行う薬物療法です。
大腸がんの薬物療法では、抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬が使用されます。1種類の薬で治療をする場合といくつかの治療薬を組み合わせる場合があります。薬物療法の投与方法は、点滴か内服です。
抗がん剤は、細胞が増えるために必要な物質の合成を妨げたり、細胞が増えることができないようにさせることでがんの進行を抑えます。大腸がんの化学療法では、「フッ化ピリミジン系」とよばれる抗がん剤をはじめとして様々な治療薬が使われます。
いくつかの抗がん剤を組み合わせて使うことが多く、段階的に、初期の化学療法で効果がない場合には次、その次と、異なる薬を使った化学療法に移行していきます。
分子標的薬で治療する方法を分子標的療法とよびます。分子標的薬は、がんの増殖に関わるタンパク質や血管を標的にして作用し、がんの進行を抑えます。
大腸がんで使用する分子標的薬は抗EGFR抗体薬、血管新生阻害薬、キナーゼ阻害薬の3種類です。抗EGFR抗体薬は、がんの増殖に関わるEGFRタンパク質のはたらきを抑えます。血管新生阻害薬は、がん細胞が増えるために必要な新しい血管が作られないようにするはたらきがあります。
免疫チェックポイント阻害薬で治療する方法をがん免疫療法とよびます。私たちの免疫が正常にはたらけば、がんは異物として攻撃されます。しかし、がんは免疫にブレーキをかけて、免疫による攻撃を防いでいることがわかっています。免疫によって攻撃を受けなければ、がん細胞は増え続け、がんが進行します。免疫チェックポイント阻害薬は大腸がんのタイプによって行うことを強く推奨されているケースもあります。
手術をしても、目に見えない小さながんが身体の中に残っていることがあります。もし身体にがんが残っていると、時間が経過してからがんが再発する可能性があります。
再発を予防するために、手術後に抗がん剤による治療を行うことを術後補助化学療法といいます。がんの進行状況や全身状態、ライフスタイルなどを考慮し、最適な治療法を選びます。
放射線治療とは、身体の外から放射線を当てて、がん細胞を壊し、がんが進行するのを防ぐ治療法です。大腸がんの放射線治療には、補助放射線療法と緩和的放射線療法があります。
大腸がんでは手術による治療が主流となります。補助放射線療法では、手術を行う前に放射線療法を組み合わせることで、がんの縮小、肛門の温存を期待することができます。術後放射線療法は、再発の抑制などを目的として行います。緩和的放射線療法は、手術で切除できないと判断された大腸がんに対し、がんによる痛みや出血などの症状を和らげることや、転移したがんに対して行います。
大腸がんに対する抗がん剤治療には、ひとつに手術後の再発を予防するための補助化学療法があります。手術による根治が難しい場合は、症状を緩和するために抗がん剤治療を行なうこともあります。近年は副作用を和らげる対策が取り入れられていますが、依然として多くの患者さんが重い副作用に苦しんでいて「やめたい」という声が挙がっていることも事実です。
そういった部分でも注目されているのが、従来の抗がん剤と違って正常な細胞にダメージを与えないという分子標的薬です。
手術による根治が難しいケースでの抗がん剤治療では、分子標的薬治療が併用されることも多くなっています。
手術で切除することができない大腸がんの治療において、分子標的薬を併用することでより治療効果が期待できるケースがあることがわかっています。現在も様々な臨床試験が行われており、どのようなケースでより効果が得られるか検証されています。
分子標的薬を併用できる治療法として、特に相乗効果が期待できるのがANK免疫細胞療法です。分子標的薬そのものはがん細胞を攻撃するわけではなく、あくまでも補助的な薬剤です。しかし、分子標的薬の単独投与でがん細胞が減少する患者さんもいます。このような高い効果が得られるかどうかは、NK細胞の活性度にかかっていると考えられます。
分子標的薬をANK免疫細胞療法と組み合わせると、分子標的薬ががん細胞の増殖を抑えている間にNK細胞ががん細胞を攻撃し、さらに分子標的薬のタイプによってはNK細胞の力を何倍にも高める効果があるのです。
どんながんも治る魔法の薬はありません。
ゆえに、保険治療の抗がん剤だけでは緩和や延命が目的になることもありますが、ほかの治療と併用することで好転することもあります。できる治療すべてを試す覚悟が大事だということも覚えておきましょう。
治療のひとつの選択肢として挙げられるのが、ANK免疫細胞療法。がん退治の本命細胞である「NK細胞」を活性化させてがん治療を行っていく免疫療法のひとつです。
以下の動画で、ANK免疫細胞療法のしくみを詳しく紹介していますのでぜひご覧ください。
手足のしびれ(末梢神経症状)は特定の抗がん剤を使用した際にみられる副作用で、大腸がん治療で用いられる「オキサリプラチン」でも起きやすい副作用です。そのメカニズムは明確には分かっておらず、有効な予防法や対処法が確立されていません。
ただ、冷たいものに触れると症状が出やすいといわれており、冷たいものに触れるときは手袋をしたり、冬場は足先が冷えないように家でも靴下をはいたりといったセルフケアが大切です。また、血流が良くなると症状が緩和されるケースもあり、指先の運動、マッサージ、ぬるめのお湯での入浴がおすすめです。
抗がん剤治療を進めるにつれ症状がだんだん重くなってきている、ものをよく落としてしまったり、文字がうまく書けないなど日常生活に支障が生じる場合は、早めに医療機関に相談しましょう。
抗がん剤は、血液細胞を作る骨髄とよばれる組織の働きを抑制します。骨髄の働きが抑えられると、血液細胞である白血球や赤血球、血小板が減少します。白血球の成分の1つである好中球は、身体の中に入ってきた細菌やウイルスなどの病原体から身体を守り、感染症を防ぐ役割があります。抗がん剤によって白血球(好中球)の数が減ると、身体の抵抗力が低下し、感染症にかかりやすくなります。
白血球が減少している時には、感染症を予防するためのセルフケアが大切です。手洗い、うがい、マスク着用などによって感染症を予防することができます。また、人ごみの多いところを避けたり、生ものを控えて火を通してから食べるということにも気を付けるとよいです。感染の兆候にすぐに気づいて対処するために、1日1回は体温を測るのがおすすめです。
白血球の数が最も減るといわれている治療開始後7~14日目の発熱には特に注意が必要です。体調が良くても、37.5℃以上の発熱を認めたら、早めに医療機関に相談しましょう。
吐き気や嘔吐は、抗がん剤によって脳の嘔吐中枢が刺激されると起きる症状です。大腸がんの治療で用いられる「トリフルリジン・チピラシル」は、吐き気や嘔吐を起こしやすい抗がん剤として知られています。
吐き気や嘔吐の症状は、抗がん剤を投与してから数時間で起こることもあれば、翌日以降に起こる場合もあります。個人差はあるものの、3~4日ほどで改善することが多いです。食べる量の調整や身体を締め付けない衣類の着用、室内環境の調整などのセルフケアで症状が和らぐことがあります。また、処方された吐き気止めを内服することによって吐き気や嘔吐を防げる場合もあります。
吐き気や嘔吐により食事ができない状態が続く場合や激しい嘔吐が続いている場合、十分な水分もとれていない場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
抗がん剤が腸の粘膜を傷つけたり、腸の動きに影響を与えると下痢が起こります。下痢の症状は、抗がん剤の投与直後から起こる場合や数日後に起こる場合があります。
下痢の症状がある時に気を付けなければいけないのは、脱水症状を見逃さないことです。脱水症状として、尿量減少、口腔内の乾燥、脱力、頭痛、めまいなどを認めた時には要注意です。セルフケアでは、こまめな水分補給や温かくて消化の良い食事をこころがけるとよいです。
下痢が3日以上続く、1日4~6回以上の下痢がある、便に血が混ざっている、37.5℃以上の発熱がある、強い腹痛がある、脱水症状がある、などのような症状がある場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
口内炎は、抗がん剤によって口の中の粘膜が傷つき、炎症を起こすことによる症状です。口の中の細菌による感染から口内炎が起こる場合もあるので、セルフケアではうがいや歯磨きによって口腔内を清潔に保つことが大切です。
抗がん剤治療前に、虫歯や歯周病の治療をしておくと口内炎の予防になります。飲酒や喫煙は控え、口内炎ができた時には熱いものや辛いものなどの刺激が強い食事を避けた方がよいです。
口内炎で食事が十分にとれない場合、虫歯や歯周病などの口腔内の異常を認めた場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
抗がん剤によって吐き気や嘔吐、口内炎、下痢などの副作用が起きると、食欲不振になることが多いです。セルフケアでは、食べられる時に食べたいものを食べるようにしたり、食べやすい味付けや温度の食べ物を探したり、1回に食べる量を減らして数回に分けて食べるようにすることなどを試してみるとよいでしょう。
食べたいものがみつからない場合や食事で足りない栄養素を効率よく補いたい場合には、栄養補助食品の利用を検討するのも1つの方法です。どのような栄養補助食品がよいか、医師や看護師、栄養士などに相談してみるのがおすすめです。
食事も水分も全くとれない、体重がどんどん減っているような場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
抗がん剤による脱毛は、髪の毛だけでなく、まつげやまゆげ、体毛に起こることがあります。脱毛は、抗がん剤治療後2~3週間で起こることが多い副作用です。脱毛は一時的で、治療終了後数か月で再び毛が生え始め、約2年で元に戻るといわれています。
脱毛の予防法は確立していないものの、セルフケアでは頭皮の清潔や負担の軽減を心がけるとよいでしょう。洗髪する時には刺激の少ないシャンプーなどを使用し、頭皮を傷つけないように爪を短く切っておくとよいです。ドライヤー使用時には低い温度に設定し、パーマやカラーリング、育毛剤などの使用は避けた方がよいです。帽子やバンダナ、医療用のかつらなどで外見の変化を工夫すると、脱毛による喪失感を軽減できるのでおすすめです。
脱毛した所に痛みを伴う皮膚の症状がある場合には、早めに医療機関に相談しましょう。
東京女子医科大学医学部卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。
妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。