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ANK療法とNK細胞療法の違い

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NK細胞療法とANK療法、似たような呼び名で同じようにNK細胞の力を利用することから混同されがちですが、決定的な差があります。ここではNK細胞の特徴やNK細胞療法のメカニズム、ANK療法との具体的な違いについて説明します。

目次

同じNK細胞の力でも治療強度が一番の違い

日本で実施されている免疫細胞療法の多くは、一般法と呼ばれる方法で行なわれています。具体的には30~50cc程度の血液から分離した免疫細胞を2週間ほど培養するもので、副作用も若干の発熱だけで治まります。治療によっては薬剤を添加したり投与の前処置を行なったりと多少の差がありますが、大きな違いはありません。NK細胞療法も同様です。

ANK療法もNK細胞の力を利用するという点では共通ですが、根本的な方法が違うため治療強度にも大きな差が出ます。治療にあたっては5~8リットルもの血液を体外循環させながら大量にリンパ球を分離し、そこからNK細胞だけを選択的に増殖、活性化させます。

その結果、一般法を上回る細胞数と活性度が得られ、がん細胞への攻撃力も高くなります。その効果は大きながんが壊死を起こす可能性もあるほどで、それだけ副作用の発熱症状も重くなりがちです。一度に体内に戻すのはリスクが高いので、週2回、合計12回に分けて投与することで高い治療効果と安全性の両立を目指しています。

ANK免疫細胞療法について
こちらの動画で詳しく説明しています

NK細胞療法とは

NK細胞に司令塔は不要

NK細胞はリンパ球の一種で、非常に強い細胞殺傷能力を持っています。NKは「ナチュラルキラー(natural killer)の略で、文字どおり「生まれつきの殺し屋」さながら、全身を常にパトロールしつつウイルス感染細胞やがん細胞を見つけ次第攻撃して排除します。こうした性質から、NK細胞は身体にもともと備わっている自然免疫において重要な役割を担っていると考えられています。

血液中に存在するリンパ球の10~30%を占めるNK細胞は、ターゲットとした細胞の膜に穴を開ける「パーフォリン」というたんぱく質や、細胞の自然死を誘導する「グランザイム」というたんぱく質分解酵素を持っています。これらを細胞傷害因子といい、NK細胞の高い攻撃力の源となっています。

また、NK細胞が攻撃モードに入るかどうかは、活性化型レセプターと抑制型レセプターという2種類のアンテナの作動によって決まります。NK細胞がウイルス感染細胞やがん細胞といった敵と遭遇すると、活性化型レセプターからの信号が送られて攻撃を開始します。逆に正常な細胞と遭遇すると抑制型レセプターからの信号が優勢となり、攻撃を始めることはありません。 NK細胞は複数のアンテナを駆使して敵味方を自律的に判断し、異物を排除できるのです。なお、感染症に対する免疫細胞の中心的な存在はT細胞です。司令塔の免疫細胞から攻撃対象を指定されて動きます。

NK細胞ががん細胞を見つけるメカニズム

NK細胞が体内をパトロールしてがん細胞を見つけるメカニズムも明らかになっています。 細胞の表面には、MHCクラスⅠという分子が存在しています。しかし、ウイルス感染細胞やがん細胞ではMHCクラスⅠが消える場合が多くあります。がん細胞の場合、約60%においてMHCクラスⅠが消えています。しかし、活性が高いNK細胞はこのMHCクラスⅠの存在は関係ありません。異物であれば攻撃するのです。NK細胞の活性が高いことが重要なのです。

健康な人でも、体内では毎日5,000~6,000個のがん細胞が発生しているといわれています。その多くをNK細胞が排除しています。NK細胞ががんの発症を防いでくれている、そう考えてもいいでしょう。

しかし、NK細胞の数は20歳くらいがピークで、それ以降は数が減っていくとも言われます。がんの発症率は40歳くらいから急激に増え始めますが、NK細胞の減少、活性度の低下との関係が深いことが推測できます。

NK細胞の数や活性度の低下によってがん細胞と戦えなくなるのであれば、それを高めてあげればいい、これがNK細胞療法の基本的な考え方です。

NK細胞療法の流れ

実際のNK細胞療法は、まず患者さんから30~50ccの血液を採取し、2週間程度の培養によってNK細胞を増殖、活性化させて再び患者さんの体内に戻すというのが通常の流れです。

培養のプロセスでは、採取した血液からリンパ球を取り出します。そこにインターロイキン2という免疫刺激物質を与えて増殖、活性化を図ります。2週間の培養期間で、リンパ球の数は数百から数千倍に増えると考えられます。NK細胞による免疫刺激がほとんどないため、身体的な負担はほとんどない治療だといえます。

抗体医薬品との相乗効果にも期待

体内にウイルスや細菌などの異物が侵入した場合、その異物に結合して身体を守ろうとするたんぱく質を抗体といいます。がんも同様で、がん細胞に結合して増殖を抑えようとする抗体や、がんに栄養を供給する血管がつくられるのを阻害する抗体など、その働きはさまざまです。これを薬剤にしたものが抗体医薬品です。

抗体ががん細胞に結合すると、NK細胞はそれを認識し、がん細胞への集中的な攻撃を開始します。これを抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性といいます。

乳がんなどの治療に用いられるトラスツズマブや、B細胞リンパ腫などの治療に用いられるリツキシマブ、大腸がんなどの治療に用いられるセツキシマブなどは、ADCC活性が確認されている分子標的薬を含む抗体医薬品です。これらをNK細胞療法と併用すると、高い相乗効果が期待できそうです。

このページの監修者

木村 眞樹子 医師

東京女子医科大学医学部卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。
妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。

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