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ハーセプチン

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ハーセプチンは、乳がんや胃がん、唾液腺がん、大腸がんに使用される治療薬です。ここでは、ハーセプチンの作用や特徴、効果、副作用、注意点などについて説明します。ただし、他の治療薬と同じように、ハーセプチンの効果や副作用は個人によって異なることも理解しておいてください。

ハーセプチンとは

ハーセプチンは、がん細胞に存在するHER2タンパクを標的とし、働きを妨げることによって、がん細胞の増殖を抑えることを目的として開発された薬です。ハーセプチンは、増殖を促進するHER2タンパクと結びつき、その働きを阻害することで、がん細胞の増殖を抑えることができます。また、ハーセプチンがHER2タンパクと結びつくと、それを標的として、身体に備わっている免疫細胞が働き、がん細胞を壊していくと考えられています。

人の体には、ウイルスな細菌などの病原体やがんなどを攻撃する免疫反応が備わっていて、この免疫反応に関する細胞を免疫細胞と言います。免疫細胞には、白血球の仲間であるマクロファージや好中球、ナチュラルキラー細胞などがあり、それらが協力しながら機能を発揮すると言われています。

医薬品情報

ハーセプチンの治療が受けられる人

ハーセプチンの治療が受けられるのは、手術による治療が困難、もしくは再発したHER2陽性の唾液腺がん患者さんです。

HER2検査

ハーセプチンは、HER2タンパクのみに作用するため、HER2タンパクをたくさん備えているがん細胞だけに効果を発揮しやすいです。そのような性質があることから、がん細胞のHER2タンパクの量を検査し、ハーセプチンの治療に適応しているかどうかを判定しなければなりません。

HER2検査の方法

手術や検査で採取した組織を使って、顕微鏡で観察する検査で調べます。HER2タンパクがどのくらいあるかを確認するには、タンパクの量を調べる方法(IHC法)と、タンパクをつくるもとになる遺伝子の量を調べる方法(DISH法)があります。

HER2検査の結果とハーセプチン治療の対象者

IHC法でHER2タンパクがたくさんある方、もしくはDISH法でHER2遺伝子の数が多い方は、ハーセプチンの標的となるHER2タンパクを多く所有しています。このような方は、ハーセプチンが効きやすく、治療対象となるとされているのです。

HER2タンパクとは?

私たちの体の正常な細胞は、体や周囲の状況に合わせて増える量を調整しています。しかし、がん細胞は制御されずに増え続け、正常な細胞が必要とする栄養を奪ってしまい、さまざまな臓器の機能を低下させて体を弱らせます。

HER2タンパクは、細胞の増殖に関わる重要なタンパク質です。このタンパク質は細胞の表面に存在し、2つのHER2タンパクが結びつくことで細胞が増えるきっかけを作ります。HER2タンパクを多く持つ細胞は、持たない細胞よりも早く増殖します。つまり、HER2タンパクがたくさんあると、がん細胞も活発に増えてしまうのです。

ハーセプチンの作用と特徴

ハーセプチンは、HER2陽性である乳がんや胃がん、唾液腺がん、大腸がんに対して使用される薬です。がんの種類によりますが、HER2が陽性ということだけでなく、進行していて手術が難しい場合、または再発した場合にハーセプチンが使用できます。

ハーセプチンは、がん細胞の増殖にHER2に作用し、がん細胞が増えることを阻止します。

ハーセプチンの効果・効能 

ハーセプチンは、HER2陽性の乳がん、HER2陽性の治療切除不能な進行・再発の胃がん、HER2陽性の治療切除不能な進行・再発の唾液腺がん、大腸がんに対する効果を期待できます。

ハーセプチンの有効成分

ハーセプチンの有効成分は、トラスツズマブです。有効成分であるトラスツズマブが、がん細胞の増殖に関わるHER2という物質に結合し、がん細胞が増えないように作用します。

ハーセプチンの用法・用量

ハーセプチンは、治療するがんの種類によって用法・用量が異なります。例えば、HER2陽性の乳がんに対しては、1日1回、初回投与時には4mg/kg (体重)を、2回目以降は2mg/kg (体重)を90分以上かけて1週間間隔で点滴静注します。患者さんの状態を考慮し、投与量は適宜調整されます。

ハーセプチンと各種がんの治療について

ハーセプチンと乳がん

ハーセプチンを乳がんの治療に使う場合、がんの進行状況や症状によって使い方や期間が異なります。

ハーセプチンは、単独で使用するケースと、ホルモン療法や抗がん剤と併用するケースがあります。

高齢の方や骨髄の機能が低下している方は、抗がん剤を使うのが難しい場合があり、その際はハーセプチンを単独で使用します。

ホルモン受容体陽性の場合は、ハーセプチンとホルモン療法を組み合わせます。また、効果を高めるために、ハーセプチンと抗がん剤を併用することもあります。

ハーセプチンと胃がん

胃以外にがんが広がっていたり、再発して手術が難しい胃がんの場合、薬による治療が行われます。

治療前にHER2検査を行い、陽性であればハーセプチンの対象となります。HER2陽性の場合、抗がん剤とハーセプチンを組み合わせることで治療効果が高まることがわかっており、この併用が推奨されています。

進行・転移した胃がんに対するハーセプチンの目的は、がんによる症状を抑えたり、生活できる期間を延ばすことです。

初回の投与時は1時間30分かけて点滴し、その後は3週間ごとに投与します。初回で問題がなければ、次回から投与時間を30分まで短縮することもできます。

ハーセプチンと大腸がん

手術でがんを完全に取り除くことが難しい場合や再発した大腸がんでは、薬による治療が検討されます。治療前にHER2検査を行い、陽性であればハーセプチンの対象となります。

ハーセプチンを使用する際は、同じ種類の薬であるパージェタと併用します。この2つを併用することで、治療効果が高まるとされています。

パージェタとハーセプチンは、同じ日に順番に点滴します。3週間に1回のペースで、初回はパージェタを1時間、ハーセプチンを1時間30分かけて投与します。問題がなければ、次回から投与時間を短縮できます。また、点滴を受けた後は、体を休めるために20日間の休薬期間があります。

ハーセプチンと唾液腺がん

手術が難しい場合や再発した唾液腺がんでは、放射線治療や薬による治療が行われます。治療前にHER2検査を行い、陽性であればハーセプチンの対象となります。

抗がん剤のドセタキセルと併用するのが一般的で、3週間を1コースとして繰り返します。ハーセプチンは1時間30分かけて投与しますが、初回で問題がなければ次回から30分に短縮できます。

ハーセプチンの注意点

ハーセプチンを治療薬として使用する場合には、基本的な注意点がいくつかあります。

ハーセプチンの治療中に心障害が起こる場合があるので、治療前に心機能を確認する必要があります。治療中に、呼吸困難、咳、不整脈などの心障害を疑う症状が起きた場合には、適宜心エコーなどの心機能検査を行います。心障害を認めた場合には、ハーセプチンの休薬、中止を検討します。

インフュージョンリアクションは、ハーセプチンのような分子標的薬の点滴時に見られる副作用のことです。なぜ起こるのかは明らかになっていないですが、がん細胞が薬の作用で急速に壊され、炎症やアレルギー反応を引き起こす物質が放出されるからではないかといわれています。インフュージョンリアクションの症状は、発熱、頭痛、発疹、かゆみ、寒気などです。インフュージョンリアクションは投与開始後24時間以内に多く見られる副作用で、重度の場合には命に関わることがあります。

日常生活における注意点

特に体調が悪くない限り、普段と同じ生活をするようにしましょう。身体の調子が優れない場合には、無理をせずに休むようにしてください。ここでは、日常生活における注意点について詳しくご紹介します。

食事はバランスよく摂取する

栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。①ご飯・パン・麺などの炭水化物、②肉・魚・卵・豆③野菜・果物といった食品を偏りなく摂取するようにしてください。

食欲のないときや、吐き気があって食べられない場合もあるでしょう。そのような場合には、栄養のバランスよりも、食べたいものや食べられそうなものを選ぶようにしてください。市販の栄養補給食品などを活用するのもおすすめです。

適度な運動を心がける

適度な運動をすると、気分転換になります。散歩やラジオ体操などの軽い運動は、積極的に行うようにしましょう。

眠れないときは主治医に相談を

寝つきが良くないときや、眠れないとき、寝た気がしないときもあるかもしれません。主治医に相談すると、緊張をほぐす薬や睡眠薬などを処方してもらえることもあります。

疲れたときは休養を心がける

治療を続けていると、疲れたり、精神的につらかったりすることもあります。そのような場合は、仕事や家事は後回しにして、ゆっくり休養することが大切です。 不安な場合は、色々な人に話すことで落ち着くこともあります。

効能または効果に関連する注意

ハーセプチンは、HER2に作用してがん細胞の増殖を阻止する薬なので、治療前にHER2陽性であることを検査によって確認する必要があります。

術後補助化学療法においては、ハーセプチンの有効性は確立されていません。術後補助化学療法とは、手術の後に身体の中に残っているがん細胞に対して薬を使用し死滅させることで、再発を抑える治療法です。

用法及び用量に関連する注意

HER2陽性の乳がんに対して、1年以上投与した場合の安全性および有効性は確立されていません。

ハーセプチンの副作用

ハーセプチンを使用中に副作用が出ることがあるので、体調に変化があった時にはすぐに担当医に相談するようにしましょう。副作用によっては、使用を中止する必要があります。

ハーセプチンの使用中に見られる可能性のある副作用には、以下のようなものが挙げられます。

今回挙げた症状以外でも、ハーセプチンによる副作用の場合もあるので心配なことがあれば担当医に聞いてみるようにしてください。

ハーセプチンの重大な副作用

ハーセプチンの使用中に、重大な副作用が起こることがあります。適切に対処しないと命に関わる場合もあるので注意が必要です。ハーセプチンを使用中に、体調に変化があった時にはすぐに担当医に相談するようにしてください。

間質性肺炎

ハーセプチンで治療中に、間質性肺炎が起こる場合があります。間質性肺炎の症状は、発熱、咳、呼吸困難などで、命に関わることもあるので注意が必要です。ハーセプチンを使用中に間質性肺炎の発症を認めた場合には、すぐに使用を中止し、ステロイドの投与などを行います。

腫瘍崩壊症候群

腫瘍崩壊症候群は、がんの治療中に、がんが急速に死滅するときに生じることがあります。がんの急速な死滅により、血液中のカリウムやカルシウム、リン、尿酸の量が増えて、急性腎障害やけいれん、不整脈などの異常が起こります。治療開始後12~72時間以内に起こることが多く、命に関わる可能性もあるので注意が必要です。異常を認めた場合には、ハーセプチンの投与を中止し、適切な処置を行います。

心不全(心臓への影響)

ハーセプチンの重大な副作用の一つに、心臓の機能低下があります。心臓が正常に働かなくなると、体に必要な酸素や栄養が行き渡らず、命に関わることもあります。特に、もともと心臓に問題がある方は、ハーセプチンの使用後に症状が急激に悪化することがあるため、注意が必要です。

心臓の機能低下を早く見つけるため、治療の前や治療中に心臓の検査を行うことがあります。治療中に息切れや動悸、脈の乱れ、呼吸が苦しいなどの症状が出た場合は、すぐに担当の医師にご相談ください。

他の治療法と併用する場合の副作用

抗がん剤を併用する場合

抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えるため、副作用が生じることがあります。主な副作用として、体のだるさ、吐き気、嘔吐、手足のしびれ、むくみ、下痢、脱毛などがあります。

使用する抗がん剤の種類によって副作用も異なるので、治療中に体調の変化を感じたら、すぐに担当医にご相談ください。

ホルモン剤(乳がん治療)を併用する場合

女性ホルモンは乳がん細胞の増殖を促すため、乳がんの治療ではホルモン剤を使用することがあります。ホルモン剤は、女性ホルモンの働きを抑えたり、生成を阻害する薬です。

しかし、女性ホルモンが減少すると、ほてりや発汗、頭痛、不眠、不正出血などの症状が現れることがあります。

また、女性ホルモンは骨を守る役割もあるため、ホルモン剤の使用で関節痛や骨折のリスクが高まることもあります。

ハーセプチンに関するよくある疑問Q&A

Q.高齢(65歳以上)の場合、副作用のリスクが高いのでしょうか?

一般的に、高齢の方はハーセプチンの治療で高血圧や心臓の病気が起こりやすいとされています。治療中に動悸や息切れ、呼吸が苦しいなどの症状が出たら、すぐに担当の医師にご相談ください。

また、高齢の方は心臓だけでなく、肝臓や腎臓の機能が低下していることが多いため、ハーセプチンと併用する薬の副作用が出やすいこともあります。

副作用のリスクを減らし、早期発見するために、治療の前や途中で心臓や肝臓、腎臓の検査を行います。

Q.妊婦さんへの影響は?治療後の妊娠のタイミングはどうすればいいですか?

ハーセプチンは、妊娠中期以降に使用すると羊水が減少する可能性があります。そのため、治療のメリットがリスクを上回ると判断される場合のみ、妊娠中や妊娠の可能性がある女性に投与されます。

治療中と、治療後少なくとも7か月間は、避妊が必要です。他の薬を併用する場合、避妊が必要な期間が異なることがありますので、詳しくは担当医にご相談ください。

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