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5-FUは、胃がんや肝がん、結腸・直腸がん、乳がん、膵がん、子宮がん、卵巣がん、食道がん、肺がんなど多くのがんに対する治療薬として使われます。ここでは、5-FUの作用や特徴、効果、副作用、注意点などについて説明します。ただし、他の治療薬と同じように、5-FUの効果や副作用は個人によって異なることも理解しておいてください。
「5-FU」は、一般名を「フルオロウラシル」と言い、代謝拮抗薬と呼ばれる抗がん剤の代表的なものです。この抗がん剤は、1956年にスイスにあるロシュ社によって開発されたものであり、非常に長い歴史を持つ抗がん剤です。日本でも1967年から販売が開始されて以来使用されています。5-FUは、軟膏や錠剤、ドライシロップといった経口薬のほか、座薬の開発・承認も行われており、それぞれの疾患や病態に応じた使い分けが可能である点も特徴となっています。
現在は消化器がん(大腸がんや胃がんなど)の治療に用いられている抗がん剤ですが、そのほかにも乳がんや子宮がん、卵巣がん、皮膚がんなど、さまざまながんの治療に使用されています。また、食道がんや肺がん、頭頸部がんの治療においては、注射剤と他の抗がん剤、または放射線と併用されています。
5-FUは「ピリミジン系代謝拮抗剤」に分類される抗がん剤ですが、この種類の薬は細胞の分裂や増殖の際に必要となる代謝物質に似た構造を持っているという特徴があります。本来の代謝物質の代わりにがん細胞に取り込まれ、DNAの合成を阻害します。
また、5-FUは「体内で分解されやすく効果の持続時間が短い」点も特徴のひとつとして挙げられています。そのため、他の薬剤を併用したり、点滴を用いた静脈内への持続注射などが行われます。そのほか、「UFT(一般名テガフール・ウラシル)」や「TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシル)」「ゼローダ(一般名カペシタビン)」など、5-FUを長時間体内に留めて効果を高めるための経口薬も開発されています。
前述の通り、5-FUはさまざまながんの治療に用いられていますが、特に大腸がんや胃がんなど消化器系のがんに対して多く使用されています。治療時には、主に多剤併用されています。
例えば大腸がんの化学療法においては、5-FUが中心的な役割を果たしているとされています。再発例や転移例、手術ができない症例などについては、下記のような多剤併用療法が標準的な療法として用いられています。
食道がんの治療においては、5-FUとブリプラチン(またはランダ、一般名シスプラチン)の2種類の抗がん剤を併用する方法が一般的とされており、他の臓器への転移が見られる場合に用いられています。また、放射線や手術と併用されるケースもあります。
胃がんの治療においては、これまでは5-FUとプリプラチン、また5-FUとメソトレキセート(一般名メトトレキサート)といった組み合わせが多く用いられていました。しかし、TS-1という抗がん剤の登場によって、進行胃がん・再発胃がんに対してTS-1を第一選択薬とする場合が多くなっています。
肝臓がんや膵臓がん、胆道がんについては、アイソボリンなどとの組み合わせによる治療が有効な選択肢と考えられています。
5-FUは、胃がんや肝がん、結腸・直腸がん、乳がん、膵がん、子宮がん、卵巣がん、食道がん、肺がんなど多くのがんに対して使用される薬です。細胞の遺伝情報を持つDNAやRNAの合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑えます。
5-FUは、胃がんや肝がん、結腸・直腸がん、乳がん、膵がん、子宮がん、卵巣がん、食道がん、肺がんなど多くのがんに対して効果を期待できます。
有効成分であるフルオロウラシルが、細胞の遺伝情報を持つDNAやRNAの合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑えます。
5-FUの用法・用量は、がんの種類や併用する薬剤の種類などによって異なります。
例えば、成人の頭頚部がんや食道がんに対して他の抗悪性腫瘍剤と併用する場合には、1日1000㎎/m2までを4~5日間連日で持続点滴します。投与を繰り返す場合には、少なくとも3週間以上の間隔をあけて投与します。
患者さんの状態を考慮し、投与量は適宜調整されます。
5-FUの治療中に注意すべき点がいくつかあります。
5-FUを治療に用いる場合には、下記のような方は注意が必要とされています。
5-FUで治療を行うと、骨髄のはたらきが抑えられることがあります。骨髄は、赤血球や白血球、血小板を作っているので、骨髄のはたらきが抑えられると、貧血や感染症、出血傾向などが起こる可能性があります。骨髄の機能が低下していると判断された場合には、骨髄の機能が回復するまで投与の延期が必要です。
5-FUの治療中に、激しい下痢が起こり、脱水症状を認めることがあります。脱水症状としては、喉のかわき、めまい、尿量の減少などが挙げられます。激しい下痢を認めた場合には、TS-1の投与を中止し、補液などの処置を行います。
治療切除不能な膵がんに対する術後補助化学療法における5-FUの安全性や有効性は確立されていません。術後補助化学療法とは、手術の後に身体の中に残っているがん細胞に対して薬を使用し死滅させることで、再発を抑える治療法です。
5-FUの治療中に、骨髄のはたらきが低下し、好中球や血小板の数が減ることがあります。好中球には身体を感染症から守るはたらきがあり、血小板には出血を止める役割があります。5-FUの投与予定日に好中球や血小板の数を確認し、必要に応じて休薬や減量を検討します。骨髄の機能が改善したら、再度投与することもできます。
5-FUの治療中に副作用が出ることがあるので、体調に変化があった時にはすぐに担当医に相談するようにしましょう。副作用によっては、投与を中止する必要があります。
5-FUの投与中に見られる可能性のある副作用には、以下のようなものが挙げられます。
今回挙げた症状以外でも、5-FUによる副作用の場合もあるので心配なことがあれば担当医に聞いてみるようにしてください。
5-FUの治療中に、重大な副作用が起こることがあります。適切に対処しないと命に関わる場合もあるので注意が必要です。5-FUの治療中に、体調に変化があった時にはすぐに担当医に相談するようにしてください。
5-FUに対して、過敏症状が出る場合があります。蕁麻疹や呼吸困難などの症状を認めた場合には、すぐに5-FUの投与を中止し、副腎皮質ステロイドや抗ヒスタミン薬などの処置をする必要があります。
5-FUの治療中に、間質炎肺炎を起こす可能性があるので発熱や咳などの症状や呼吸状態に注意する必要があります。定期的に胸部X線検査を行い、肺に異常が起こっていないかを確認します。間質性肺炎が起こった場合には、5-FUの投与は中止する必要があります。
5-FUの治療中に、出血性腸炎や虚血性腸炎、壊死性腸炎などが引き起こされる可能性があります。激しい腹痛や下痢などの症状を認めた場合には、投与を中止し、適切な処置を行います。
肝機能障害は、多くの薬の投与中に見られることのある副作用です。肝機能障害が進行すると、肝臓の機能がほとんど機能していない肝不全とよばれる状態になるので注意が必要です。
5-FUの治療中に、腎障害を認めることがあるので、投与期間中は定期的に血液検査を行い、腎機能が低下していないか確認します。腎機能障害が進行すると腎不全とよばれる状態になります。腎不全になると、患者さん自身の腎臓だけでは身体の中の老廃物や不要な水分を身体の外に出せなくなります。